上の方をねらえ

日中はすっかり春の風情である。朝晩のシバレも明日まで。週末は一気に気温があがり雨になる。今夜は特に寒い。しばらくは三寒四温が続くだろう。
▼春の陽気に反して運気は下り坂。客先のレポートが解決しないうちに別の現場で事故が発生した。作業最終日のゴゴイチに発生した赤チン災害での対応で、ここ三日ほど大わらわである。まさに実害最小影響最大の典型だ。本当に悔やんでも悔やみきれない。
▼机に座ってする仕事ではないので、どうしてもリスクは残る。その中で適材適所、重点管理で可能な限りリスクを回避してきたつもりだったが、会社からすれば原因は全て僕の無計画無責任な仕事のやり方にあるという。これで重大災害がないのが不思議だと言われればそうなのかもしれない。
▼客先や仲間をかばい、同時に自分自身も守るのは至難の業だ。身のこなしがうまい方ではなし、なるようになるまでだと思う。発注元の担当者や、作業員次第という面もあるが、そこは運の部分だ。くよくよしても仕方ない。重大災害にならないのは運がいいからだと考えることにしよう。
▼先週末から妻が帰省して再び合宿生活に突入した。お義父さんの危篤、葬儀、49日(正月含む)、そして今回と実に四か月で四度目の合宿である。月の半分は妻のいない生活だ。経済的にはもちろんキツイが、お義母さんが生活のリズムを取り戻すまではしょうがない。
▼妻の不在の間、お義母さんの世話をしているのは主にご近所さんだ。何くれとなく声をかけ、煮物などもってきてくれるらしい。しかし周りも全て高齢世帯であることに変わりない。次に様子を見てくれるのは、お抱えの電気屋さんである。電球一つ電池一個の交換から、多少電気屋の守備範囲を超えることまでなんでもしてくれる。
▼直近では2万円のラジオを買ったらしい。後でお義母さんの勘違いで8千円のマチガイだと判明したが、それでも高い。これはお義父さんが亡くなって始まったことではない。以前から妻の家のテレビは立派だと思っていた。食洗器もある。妻の家は山の上にあって、平地より少し寒いからか、学校にあるようなバカでかい暖房器具がある。床暖房も。
電気屋のお得意さまは妻の実家だけではない。山の上の造成地の全世帯がそうだ。高齢でマイカーなどの足がなければそうならざるをえない。シロアリ商法と紙一重だが、個人経営の電気屋が成り立つにはこの方法しかないだろう。そして介護事業についても同じことが言える。どんな仕事もウマミがなければ成り手はない。「担い手」では人は集まらない。
▼実の親子とはいえ、妻も母親と二人きりでは息がつまる。そこで帰省する日を一日ごまかして、到着した初日は地元の友達と思い切り羽目を外して英気を養い、翌日実家に向かう。それでもお義母さんは大喜びだ。それくらのことで親子が約2週間良好な関係でいられるのなら、ウソも方便だ。
▼台湾の地震台南市のマンションが倒壊した映像が物議を醸している。なんとコンクリートの中に一斗缶が埋め込まれているのだ。しかしあちらの専門家も日本の専門家も、構造(柱や梁)でない部分に使われているなら倒れた原因ではないといい、むしろ中国などでは当たり前のことだという。
▼情報番組の司会者は「いくら問題ないと言っても日本ではそんなことはありえないわけですから」と言ってたが、一般的ではないにしても日本でもないわけではない。墓石屋にいた頃、社長がある職人をつかまえて「あいつは信用ならん。風呂作った時手抜きして一斗缶積んで上っ面塗ったもんだから後で湿気で腐って落ちちゃった」というのを聞いたことがある。
▼例の足を骨折して90日いっぱい入院して出てきたら新車になっていたあの職人である。彼だけじゃない。特別なことでもない。中国を笑えない。人間なんて。いや人間なんで。


妻が帰省前に作った絶品カラアゲにキッシュ。