二十七回忌

雲一つない晴天なのに驚くほど涼しい。陽射しは強烈だが室内はむしろ寒いくらいだ。梅雨入り直前の5月末から6月初にかけての日曜日は、奇跡的に気持ちのいい日になることがある。今日はまさにそんな日和だ。これを野球日和と言わずして何と言おう。
▼4月17日以来の更新である。この間GWがあり、前半には大阪から友人が遊びに来て、後半は昨年に引き続き実家に帰省した。普段よりブログネタには困らなかったはずだが、やはり更新するまでには至らなかった。ブログ開設当初は毎日、つい先年まではネタがないとこぼしつつも三日に一度は更新していたのだから、こういうことは外界のトピックの多寡ではなくこちら側のモチベーションの問題だ。とはいえせっかくだから駆け足で振り返っておこう。
▼期初の大型連休であるGWは比較的休みがとりやすい。例年少なくとも後半は休めるので、震災前まではお祭りに参加し、震災後はお祭りをやめて妻とあちこち出かけていたが、昨年は妻といっしょに帰省した。今年は一昨年父親を亡くして以来隔月で帰省している妻とスケジュールが合わず単身での帰省となった。今や連休ときいて真っ先に考えるのは帰省のことである。
▼前半は大阪から友人が訪ねてくれた。こちらが遊びに行くときはいつも泊めてもらうのだが、生憎我が家は狭い仮住まい。二泊三日のベースは駅前のホテルになった。チェックイン後すぐにつけ麺屋で乾杯。時間が早くて目ぼしい店はまだ開いてないが待ちきれない。

その後近場の観光スポットを回るつもりが俄雨の雨宿り。ろくにお腹がすかないまま本命のとんかつ屋に入店となるも、これが想像以上にうまかった。

▼今や日本中食べられないものはないが、注意してみれば各地で食文化に違いはある。海産物の豊富な沿岸部と内陸の違いはもちろん、同じ肉食でも例えば博多の水炊き、大分のカラアゲに代表される北部九州は鶏肉文化。当地は豚肉文化だと思う。比較的焼鳥屋が少なくとんかつ屋が多い。その豚肉王国でナンバーワンの呼び声が高い名店である。日本一と言っても過言ではないかもしれない。食い倒れの街大阪に住む友人も大満足だ。
▼明るいうちからすっかりできあがってホテルの部屋で寅さん見て小休止した後再び出陣。連休初日、お祭り前夜の街はある種の期待感に満ちている。僕はひと月ぶり、友人は十数年ぶりに旧知のバーを訪れる。バーもママも十数年来変わらないが、友人は随分変わった気がする。でも気づかないだけでママはもちろんその晩店にいた全ての客の上にも等しく同じ時間が流れているはずだ。

休憩を挟んだとはいえ三軒目。初日はこれで打ち止めのはずが小腹がすいて〆のつけ麺。僕はつい最近までつけ麺を食べたことがなかった。何事も年をとってハマると抑制がきかない。

▼二日目は10時にホテルで友人をひろって一路焼津のおさかなセンターへ。雲一つない絶好のドライブ日和だ。ここは家族で一度、友人と二度来ているオススメスポット。GWとあって大混雑が予想されたが僕らが通された直後に長蛇の列。運がいい。運転の僕はアルコールフリーだが休日気分を満喫するには十分である。

大食堂で食事した後市場を回るもマグロとカツオの二枚看板のうちカツオが見当たらない。ようやく見つけた一匹には四千円の高値がついている。ホントに不漁なんだな。
▼温泉施設に寄って汗を流し、帰途川沿いのカフェに立ち寄る。ちょうど出てきたマスターが言うには、だいぶ日が傾いたというのに今の今まで一服する間もない盛況だったという。やっぱり僕らは運がいい。

街中に戻って二日目のメインは焼肉。ここは厚さ1センチの牛タンがウリ。東北土産にもらった名物の仙台牛タンよりずっと厚い。普通の焼肉屋のペラペラのタンとは全く違う食べ物と言っていい。接待で使う店とはいえ僕もそう頻繁に食べられるものではない。二人で最上級のタンをタン能した。ナンチャッテ。





▼最終日はデイキャンプ。うちから持参するのは折り畳み椅子とカセットコンロのみ。ホテルで友人をひろって百均で包丁、まな板、食器などを購入。スーパーで飲み物と食材を調達していざ海沿いのキャンプ場へ。箱でもらった沖縄のもずくも持っていく。数年前は下の子と小一時間でバケツ一杯とれたアサリは現地調達するつもりだったが全くとれない。不漁は深刻だ。


▼予定していたキャンプ料理のうちアサリが中止のほかは、カツオ刺しにもずくソーメン、もずくチャンプルーに缶詰のタイカレーで〆る。



スタートこそ小雨がパラついたもののじきに晴れ間ものぞきキャンプ日和に恵まれた。水風船キャッチボール、とれなかったけど潮干狩と束の間二人で童心に帰って遊んだ。ストレスフルな職業の彼は少しでも気晴らしになっただろうか。


▼だいぶ陽が傾いてきた。第84回東京優駿も終わったようだ。午前中は本を読んだりウトウトしたり。今日の日曜美術館東京都美術館で開催中のブリューゲル展。今回の目玉は「バベルの塔」らしいが、27年前に国立西洋美術館で催されたブリューゲル展の目玉は「干草の収穫」だった。僕の下宿の部屋には、そのレプリカが飾られていた。
▼テレビ桟敷の東京六大学野球、春の早慶戦も大詰めを迎えている。早慶戦はいつ見ても息詰る熱戦になる。この試合に優勝のかかる慶應はともかく、四位の早稲田のモチベーションはどこからくるのだろう。この試合も逆転につぐ逆転の好ゲームだ。ああ27年前のあの日がこんな打撃戦だったらなあ。ただ喜びも悲しみも悔恨もなにもかも、時の経過と共に淡いものになりつつあることだけは間違いない。27年前の今日もこんな奇跡のような日和だった。応援部の同窓もまだ存命だった。人は忘れないために同じ儀式を繰り返す。そして苦しみを忘れるために同じ儀式を繰り返す。


27年前の今日、確かに僕はこの中にいた。GW後編はまた次回!