ミザントロープの休日

十月も半ばを過ぎた。秋の盛り?である。こんな言い方あるのかな。ハンドルを握る手に日焼け防止の腕巻をしている女性ドライバーが目立つ。晩秋と呼ぶにはあまりに強すぎる陽射しだ。今日も快晴の一日になりそうだ。
▼東京行以来約3週間ぶりの休みである。担当事業所の方はだいぶ落ち着いてきたが、他の事業所に日曜毎の工事があり、これがほぼ年末まで続く。それ以外にこれといって予定はないが、日曜がつぶれると全てが台無しになったような気がする。しかも平日事務所にいると、すぐに他の仕事を割り当てようとする動きがある。こっちはあなた方が休んでいる間に働いてるんです。ほっといてください。
▼ここんとこ毎日社長に呼ばれて「やる気あんのか。ないなら今のままでも別にかまわないけど、あるならそろそろ次のステージに行かないとな。オマエ自身のために」とはっぱをかけられている。全く気が休まるヒマがない。できるかできないかは別にして、選択の余地はない。夫婦だけなら現状維持でもけっこうだが、子供になにかと物入りな時期である。
▼下の子は野球部が終わってから始めた駅伝部の、今日が初の公式戦である。駅伝シーズンはこれからだ。気の小さい彼は出かける前から「ああ緊張する。おしっこチビリそう」と身震いしている。仲間に気兼ねして随分迷っていたが、高校で野球を続けないと最近になって思い切り、気が晴れたようだ。
▼まっとうな人間になるには、勉強でもスポーツでも、青少年期に努力を惜しまず、自分のポテンシャルと正面から向き合うことが大事だ。親も本人も、プライドと期待が邪魔をして、不都合な真実から目を逸らしがちだが、そこのところの葛藤を経ずして大人にはなれない。彼は正しく成長している。
▼上の子は新聞配達を始めた。先日、その件でまた大立ち回りを演じてしまった。きっかけは、身元保証人の文面が連帯保証人みたいで気に入らなかったことだが、根っこには、行く価値のない大学に奉納する金を、わざわざ新聞配達してまで稼ごうとする息子の行動が理解できないことがある。彼は今、顔にアオタンを作って新聞を配っている。
▼「ずっと上から目線で頭ごなしに抑えつけられてきた」と彼は訴えた。そんなつもりは毛頭なかった。好きにさせてきた結果がこれだと思っていた。しかし身体の動きは正直である。僕は彼を押し倒し、上から頭を押さえつけたのだ。オロオロしながらなりゆきを見守っていた下の子が言った。「○○ちゃん(上の子)の言ってることもおかしいけど、あれだけはやっちゃいかんかった。人を殴るなんて、オレできん。心に傷が残る」尊重なんて聞いてあきれる。反省しきりだ。
▼子供への支配欲が図らずも露呈した僕だが、最近腰が痛い。右、左と日ごとに移動して、結局全体が痛む。今までになかった種類の痛みだ。張っていた気が緩んだとたん身体が悲鳴をあげている。身体は正直だ。腰の痛みは何を意味しているのだろう。アイデンティティの崩壊の予兆か。単なる太りすぎだね。
▼朝早くから、新聞配達から戻った上の子と交代で下の子が出ていき、続いて妻が朝ヨガに出ていった。今日はそのあと産休中のヨガの師匠からお祭りに誘われているらしい。つきあいを大事にするのは妻の美点である。旧友たちとの交流も途絶え、祭り会員からも脱退して近所づきあいもなくなり、仕事だけの人間関係すら嫌気がさしている僕は典型的な濡れ落葉予備軍だ。
▼午後からもう夕刊の配達がある上の子は熟睡している。妻のいいつけ通りお風呂を洗った僕は、ブログを更新して、せっかくの休みにこの後何をしようかな。現に営業畑の社長に「人好きのする営業向き」と言われる僕は、客観的に見てまちがいなく外向的な方だが、主観的にはどうしようもない人間ぎらいなのである。上の子の時のように、それがいつか爆発しないか心配だ。

昨夜は焼きピーマンに豆腐グラタン。