金は水なり

ギリシャ債務危機が欧州の金融危機、ひいては世界経済に深刻な打撃を与えていると言われて久しい。当初は民放のクイズ番組かなんかで「ギリシャ人は税金を払いたくないから売掛の記録をきちんと残さない。買物をしてもレシートをくれないし、催促しても手書きの紙をくれるだけ」なんておもしろおかしく紹介されていた。
▼さすがに最近はこういう笑い話のような取り上げられ方は見かけない。「ギリシャ人は昼寝ばかりしてる」とか「国民の三人に一人は公務員」とか「自分たちの給料と年金がカットされる緊縮財政に反発してデモしてる」とか言い方にトゲが出てきた。みんなマジになってる。貸した金が戻る見込みがないのだから腹が立つのも無理ないか。
▼しかし何かで堰き止めでもしない限り、お金も水も低い方に流れるのは物の道理だ。そして一度下った流れが逆流すれば、それは怪奇現象である。貧乏なギリシャがEUに参加した時点で、今日の事態に至るのは半ば決まっていたといえよう。堰を切ったように帰る当てのない投資マネーが流れ込み、アテネオリンピックでピークを迎え、終わるとバブルがはじけた。
▼これは別に国家をまたぐ投機マネーのようなスケールのでかい話に限ったことではない。尊敬する人気ブロガー女史が度々指摘しているように、今の若い人たちがまっとうに働いていたのでは一生かかっても稼げないような箪笥預金を持つお年寄りが、そのお金をさらに殖やそうと欲をかいた結果、まっとうに働いていたのではこの先夢も希望もない若者が仕方なく手を染めた詐欺的投資話にひっかかるのも同じ話である。
▼もっと言えば詐欺などの犯罪性向がなくたって同じ。現役世代の給与より多額の年金を受給する親世代から、孫の進学祝いその他と称して折につけ多額の所得移転が行われるのもある意味仕方のないことだ。何しろお金は水なのだから、あるところからないところに流れるのは自然の摂理である。
▼それでは我々貧乏人に流れついたお金は最終的にはどうなるのかって?それはパチンコ屋を経由して海に出て対馬海峡を渡り、さらに貧しい北朝鮮に流れ込んでいる。あるいは貧困ビジネスを手掛けるイオン、ユニクロソフトバンクなどの大資本に再び吸い上げられて蒸発してしまうってわけだ。こうしてお金の旅は一巡するのだね。
▼TPPなんてにわかには判断しがたい問題も、この法則をあてはめれば一目瞭然だ。落ち目とはいえ、今世界中で日本より豊かな国はない。つまり諸外国とのあらゆる新しい約束事は、高い所から低い所へと水路を拓くようなものだ。日本人にとって不利な話になるほかはない。しかしだからといって「やーめた」という話にはならないだろう。世の中には損得以外の行動基準もあるからだ。
▼今日はウイークエンドのアルコール解禁日。仕事帰りに近所の酒屋で新発売の安酒を購入。週半ばに代休がとれれば、それはそれで解禁だからずいぶんユルイ節制だ。

本日のメニューはカルボナーラにチキンサラダ。具だくさんのタルタルソースがウマイ。中のパセリはお隣さんからのいただきものだそうだ。けして裕福ではないが、幸福な食卓はプライスレス。