遠くに、祭囃子が

朝刊がビニールに入っていたのでおかしいとは思ったが、部活の試合で早朝に出発する下の子を学校まで送りに外に出ると、路面が湿って車に雨滴がついている。最近こういうことが多い。降る気配すらない秋晴れの日が続いていても、明け方一雨きている。それもほとんど毎日のように。まさに女ごころとなんとやらだ。
▼昨日の工事が順調に進んだおかけで、今日は望外の日曜の休日となった。もう年内は日曜に休めることはないだろう。平日の休みは休んだ気がしないが、サービス業の人たちはどうなんだろう。何曜日が休みと決まっていて、周囲がそのことを認知していれば別にウイークデーの休みでもいいのかもしれない。僕の場合不定期なのがよくないのかもしれない。月に二日も休めればいい方で、自分の責任において休んでいるにもかかわらず、どうしても勝手に休んだ感が拭えない。決まった休みがないとはそういうことだ。自由裁量とはそういうことだ。
▼朝から断続的に秋祭りを知らせる花火があがっている。こんな秋晴れの、そこらじゅうにお祭男たちが展開している中を出かけるなんて自殺行為だが、敵陣深く降下する空挺団隊員の心境で索敵、もとい散髪にいく。妻のエアロビが終わるのを待って、午後から県外のアウトレットモールに逃避行だ。それにしても高射砲、もとい花火が鳴り止まない。近隣各町がそれぞれあげるのだから当然といえば当然か。
▼この三連休は上の子は茨城県に合宿。下の子は昼は新人戦、夜はお祭りと絶好のデート日和である。インターから高速にのるまで「このあたりは制空権がブツブツ」と運転しながら周囲を気にする僕を後目に妻は助手席でiPhoneとにらめっこ。既にFBにあげるネタの仕込みに余念がない。最初のPAで昼食のパンを買い込み愛車を駆ること1時間半、3時ごろ目的地に到着した。

▼今日のお目当ては僕のサイフと長男の修学旅行用のシャツ。サイフは何年使ったか忘れたが、最近ジュースを買う時に小銭が落ちたのでチャックを閉め忘れた(よくある)のかと思ったら、擦り切れて底に穴があいていた。長男のシャツについては以前に書いた通りである。彼は誰かが世話を焼いてやらないと、真夏にコートを着るような男なのだ。拗ねるといけないので下の子にも秋物のパーカーを買ってあげた。ドサクサに紛れて妻も最初に何か買っていた。


▼そんなこんなしているうちに時間は過ぎ、6時に駐車場を出る頃にはもう真っ暗である。時間を気にせず遠出するなんて、子どもたちが小さい頃は考えられなかったことだ。これが一年前なら下の子から妻のケータイに何十件も留守電が入っているところである。今朝の「僕らの時代」でタレントのYOUが、もう一度若い頃に戻りたいか訊ねられて、「やっとここまでたどりついたんだよ。なのにどうしてまた最初からやり直したいなんて思うわけ?」って言ってたけどその通りだと思う。
▼8時過ぎにうちに着くと、ほどなくお祭りから下の子が戻ってきた。「みんなからお父さんどうした?ってきかれたよ。来年は出てよ」と言う。息子よスマン。物事にはいつか終わりがくる。誰にでも卒業する時がくるのだ。外はまた雨が降り出したようだ。時折遠くでラッパと男たちの歓声が響く。だがそれはいかにも遠くからきこえてくるように思えるのだった。
帰宅して妻が作ってくれたウチゴハンはきのこのペペロンチーノ。