大人になるって

三日ほど寒い日が続いたが、今日はしっかり雨が降った。晩秋らしい冷たい雨だ。晩秋らしい周期的な天気である。いや、暦の上ではディッセンバ―、もとい冬だったな。この週末は初冬らしい小春日和となりそうである。
▼日がたつのが早い。一日が過ぎるのも早い。日が落ちるのも早いので余計にそう感じる。下の子もそうらしい。「授業に集中しているとお腹がすいて給食食べるとすぐ部活になってヘトヘトになって帰ってお風呂入ってゴハン食べたら寝てしまう」と言ってる。
▼さて、金曜すっぴんのパーソナリティは、我らが源一郎アニキである。放送時間の午前中に、必ずしもラジオの聴くことができる車中にいるとは限らないが、今日なんかたまたま車に乗った瞬間に胸キュンのエピソードに当たるのだから運がいい。藤井彩子アナがリスナーからの投稿を読み上げる。
▼「彼女が初めて僕のアパートに遊びにきた時のことです。なんと彼女は着物を着てきたのです。それを指一本触れるなという彼女の意志と受け取った僕は、その日一日おとなしくしていました。とはいえ着物姿の彼女とキッチンに立ち、それなりに楽しい時間を過ごせたと思っていた時のことでした…」
▼「…彼女の手料理をいっしょに食べた後、彼女は何と言ったでしょう?」「早く言えよ」とゲンちゃん。「わたし、この着物ひとりで着たのよ…あとはご想像におまかせします」「おー」「みなさんお分りですか?つまりまたひとりで着れるということですね」と藤井アナ。「そこまで言わなくてもいいよ」とゲンちゃん。
▼僕がこの話を聞いて思ったのは、僕なら彼女のサインに気づいたろうかということだ。年をとった今ならわかるかもしれないが、若かりし当時ならどうかな。「ふ〜ん」で終わってしまった可能性が高い。恋愛の第一人者たる源一郎アニキならみなまで言わなくてもわかるだろうが、野暮が服を着て歩いているような僕にはムリ。
▼驚くべきはこのリスナーの感受性である。「着物」を「手を出すな」という記号と受け取る。それでも彼女といっしょに過ごす時間を楽しんで「まあいいか」と思える余裕。この余裕こそ「ひとりで着た」のサインを見落とさないための必要条件である。普通か。普通はアパートに来た時点でわかる。手料理でもわかるというものだ。でも23年前の僕にはわからなかった。
▼妻は昨日からヨガの教員免許を取るとかで三日連続の特別講習である。昨夜は部活を引退して放課後直帰した長男と、たまには早く帰ろうと現場から直帰した僕の二人が厳寒の玄関に締め出されることになった。さらに部活を終えた下の子が帰ってきて、ついに男三人そろって寒空の下、立ちん坊である。
▼あんまり寒いので三人でセブンに避難した。しばらく立ち読みして、あんまりお腹が空いたので肉まんとカラアゲ棒を買ってヤンキーみたいに外で食べた。それからうちに戻って妻が帰るまでの短い間、アパートの前で三人でかけっこをした。バレー部を引退したばかりの高3の長男と、現役の野球部の中2の次男である。高校の部活以来ろくに運動してない僕が敵うわけない。実際負けた。でも全然負けた気がしない。これが大人の余裕である。
▼帰ってきた妻に「ヨガなんてストレッチみたいなもんだろ」と言うと「あんたなんかに話してもわかんないわよ」と妻。「美容と健康に執着する女性のエゴを利用した金儲けだよ」と言うと「あなたお義父さんそっくり」と妻。あんまり理屈で責めても可哀想なのでこの辺でやめとく。これも大人の余裕。
▼その妻が講習で先生に「何かガマンしてることはありませんか?」ときかれ、「わたしはガマンしてません」と答えたという。「じゃあ誰がガマンしてるの?」とさらにきくので、「主人がわたしのワガママをガマンしてるけど、それが主人の幸せですと言いきってきた」らしい。やっぱり妻の方が何枚も上手だ。というわけでここんとこヨガカレーとヨガハヤシで写真なし。