冬季五輪の醍醐味

オリンピックの開会式に合せるように列島は雪に包まれた。僕の住んでいる街は雪にはならなかったが、それでも凍える寒さで、なんとなくうちを出そびれてしまった。謹慎中の上の子、練習が中止の下の子といっしょに、土曜は一日うちに幽閉状態である。
▼こんな時に各人の性格が如実に表れる。マイペースに寝たいだけ寝て、起きればひたすらスマホをいじってまるで平気な上の子と、せっかく家族が全員そろっているのに悪天候が恨めしそうな下の子。貴重な休日を友達と遊ぶか家族で過ごすか決めかねている。どっちがどっちに似たかって?妻は高鼾で寝ている。下の子に「お父さん雨で嫌じゃない?」ときかれてドキッとした。
▼さて、いよいよソチ五輪が開幕した。これから約二週間、楽しみが増えたね。メダル獲得数をひもとくと、前回バンクーバーが金なしの五個。その前のトリノ荒川静香の金一つのみ。自国開催の長野でさえ二桁十個がやっとだから、冷静に考えればメダルを取るのはかなり難しいことだとわかるだろう。
▼興ざめかもしれないが、メダルの可能性があるのは毎年ワールドカップを上位で転戦している有力選手だけである。我々は日本人が出ればすわメダルかと期待するが、予選を通過できない選手がほとんで、彼らとメダリストの実力差は、我々が想像するよりはるかに大きい。競技には国ごとに歴史があり、メダルは番狂わせで取れるようなものではない。その背景を知らずに、ただ期待しては失望するのでは選手がかわいそうだ。
▼例えばスピード競技なら持ちタイムがものを言う。スピードスケート男子500mなら35秒、女子3000mなら4分を切る戦いになる。仮に実際の優勝タイムが大巾に下回るにしても、自己ベストがそのあたりにないと話にならない。採点競技ならノーミスが絶対条件。その次に技の難易度、見栄えの勝負になる。一発勝負に実力者がミス泣くこともありうる。エッジが氷の溝にとられたり靴紐が切れるような運もあるかもしれない。しかしあくまで基礎的ポテンシャルは必要条件だ。
▼日本人選手は総じて健闘していると思う。特にスノボの角野選手は存在感を示した。決勝の12人に残り、お手つきしたにもかかわらず大技を決めての8位入賞は立派だ。モーグルの愛ちゃんも実力を出し切った。残り三人までトップで、その三人にまくられるのだから実力的にはメダル争いというより入賞レベルの選手である。愛ちゃんは元々ターンの技術には定評があった。さらに出場選手中トップのタイムだったというから、モーグルという競技の本質は、ターンでもタイムでもなくエアを含めた滑りのダイナミズムを鑑賞する採点競技なのだ。そこに里谷多英が一発で金をさらう可能性はあっても、愛ちゃんがメダルを取る余地はなかった。
▼スマイルジャパンのアイスホッケーは五輪初勝利を目指す戦い。もちろんメダルどころか予選突破も難しい。金メダルの本命は今季ワールドカップ最多勝記録を塗り替えた女子スキージャンプの高梨ただひとり。だが調子のピークがちょっと早すぎた。男女フィギュアの羽生と真央ちゃんもメダル候補。あとは何色になるか。今季世界ランク3位の葛西はメダルに届くか。男子500メートルもメダル圏内といったところ。橋本聖子団長の長野五輪超えという目標は、目標としては現実を知る元アスリートらしく順当なものだ。
▼それなのに女子アナがシレッと「スマイルジャパン、次のロシア戦は負けられない戦いになります」なんて言うのが腹が立つ。かと思えばNHKスタジオゲストの浅田舞が「まだドイツ戦がありますから…」なんて失言していたが。自分がどの位置にいるか、監督、コーチ、スタッフなど関係者はもちろん、選手本人が一番よくわかっている。だがそれを口にするわけにはいかない。全員が全員メダルの可能性があるような顔をしていなければならない。それが気の毒だ。
▼日本人の有力選手がいないので注目度は低いが、僕なんかは冬季五輪の本当の見どころは滑走、回転、大回転のアルペンだと思う。同じノルディックでも日本の得意なジャンプではなく距離。フィギュアなんて夏のシンクロと同じで何がいいのかさっぱりわからない。角野が17歳、平野が15歳でスゴイと騒いでいるが、スノボは若い人がやるものだ。

金曜は絶品カラアゲに切干大根サラダ。

朝、妻がスコーンに入れるチョコを刻んでいて指をかなり深く切ったので、夜は外食にした。

近所のお気に入りの韓国料理店。もう最近は外食でもお酒をたのまず、ひたすら食べるのみ。注文からお愛想までものの30分もかからない。先客のきれいな奥さんがあまりに長いこと僕を見つめるので知り合いかと思って会釈してしまったよ。単にスピードが速すぎて目を丸くしてたんだね。
うちに帰ってまったり「最高の離婚2014スペシャル」を観る。最高だった。