天然芝と鶯谷

びっくりするほど気持ちのいい天気である。良く晴れて、とにかく空気が素晴らしい。初夏の一番いいところが全部出たような日だ。
▼そんな中、今日は仕事を途中で抜けて午後からサッカーの試合を観に行った。客先のチームの後援会で、これも仕事のうちである。一部の隙もなく整備された天然芝に、初夏の陽射しが反射してまぶしい。スタンドでコンビニのおにぎりを頬張り、90分試合を観戦して、また現場に戻った。すぐ横に、小さな女の子を連れた女性がいた。ユニクロのCMで話題の吹石一恵そっくりの美人だ。「ほら、パパ出てるよ」選手の奥さんらしい。
▼昨日NHKの72h定点観測のカメラが座ったのは鶯谷駅前の大衆食堂。たまたま自由人さんの最新ブログが鶯谷の名店「鍵屋」のリポートだったのも何かの縁か。僕は鶯谷駅で直接乗り降りしたことはないが、大学3年から四年間お世話になったバイト先が巣鴨だったこともあり、麻布や青山なんかより格段に親近感のある街だ。
▼エロ本を作っていた頃、鶯谷か日暮里あたりの鄙びた和風ラブホでハメ撮りの撮影をしたことがある。カメラマンは地元の同級生。高校で写真部に所属し、大学は哲学科を出て、卒業後単身渡米してNYで写真を学んだということだったが、ダラダラ留年した挙句中退してエロ本の編集部に転がり込んだ僕と帰国後の彼が、どういういきさつで東京で再会することになったかはもう覚えていない。
▼彼は当時既に、残像でしかとらえることのできない高速の腰づかいで、サオ師としての地位を確立していた。まな板ショーで踊り子をイカせたというようなもっともらしい噂もついてきたが、僕は半信半疑だった。だがその現場で、僕は彼の実力をすぐに思い知らされることになる。せっかく二人いるので、からんでない方が交代で撮影を担当することにしたのだが、悔しいけどモデルの子の反応が違った。
▼その出版社に僕が何か貢献できたことがあるとすれば、唯一彼を紹介したことぐらいだろう。全く男根が服を着て歩いているような奴だった。僕の結婚式にも来てくれて、写真を撮ってくれた。その後数年は年賀状のやりとりもあったが、いつのまにか疎遠になった。そりゃそうだ。エロ本を作ってる頃ならともかく、やめれば接点がないもの。今頃彼はどうしているだろう。
▼一口に首都といい東京といっても、いろんな人がいていろんな顔がある。鶯谷の印象は、今の季節感とちょうど正反対。僕が在京中に山手線の窓から眺めた景色も切り立った崖が多かった。薄暗くジメジメして空気が淀んでいる。一言でいえばウエットだ。でも現代社会のドライな人間関係にうまく馴染めない人にとっては、むしろ居心地のいい街かもしれない。
▼思えば20年前の撮影も、鶯谷らしいウエットなものだった。初めのうちこそ花瓶やコーラのビンを股間にあててポーズをきめ、束の間前衛を気取っていたが、湿った不潔な蒲団に転がされると、醜女はすぐに喘ぎ始めた。撮影が終わり、みんなで編集費で焼肉を食べ、その企画モデルと別れた。ほかのモデルと同じように、たいていは二度と会うことのない別れだ。
谷深く鶯の声谺して

金曜はベーコンナスパスタにトルティーヤ。

今日はぶっかけそば。
▼「美味しんぼ」鼻血描写問題続報。昨日国会内で複数の専門家が、「根拠のない発言が風評被害を助長する」と放射線との因果関係を否定しようとする政府に対し「医学的根拠はある」と反論する記者会見を開いたらしい。僕が知る限り、朝日が報じたニュースを引用したネットの記事以外にこの件を報道するメディアを見ない。福島の子供たちに甲状腺ガンが増えている件と共に特集を組むべき問題であり、この週末の報道番組が見ものだ。
▼仮にスピリッツ休載とか先週既に報道されている内容でお茶を濁し、タレントの覚せい剤やPC遠隔操作などどうでもいいニュースを流し続けるようなら、政府が報道統制を敷いているとみて間違いない。既に土曜夜のTBSニュースキャスターはニュースワードランキングで当たり障りなく触れて逃げた。キャスターもゲストも誰ひとりコメントしなかった。明日でこの国のマスコミのお里も知れる。僕は朝から観たい映画があるので、どなたかチェックしといてくれませんか。