そして九月は

日中の陽射しはたしかに強いが、夜は一枚羽織らないと寒いくらいだ。今年は秋の訪れが早い。今日は職人がこなくて望外の休みになった。やはり隔週で一日くらいは休みがほしい。休みがないと、現場が終わって事務仕事をする気力がわかない。現場を維持するのが精いっぱいで、とてもその他のことまで手が回らない。
▼休みの朝の目覚めは格別だ。といっても今朝は3時に目が覚めてしまった。最近年をとったせいかよく眠れない。夕飯を食べてテレビを見ている時は息も絶え絶えだが、完全には眠れない。結局布団に横になるのは1時2時で朝は5時には目が覚める。21時頃から6時頃まで寝ている下の子や、眠ったら揺すっても起きない妻や上の子がうらやましい。
▼昨日は学生の頃好きだった高校のクラスメイトの誕生日だった。僕は学生時代に三度恋をしたが、そのうち二人は誕生日が九月だった。僕は毎年春に恋をして夏には失恋するパターン。八月の自分の誕生日までもたないのだから、結局彼女たちの誕生日を祝う機会は一度もなかった。
▼時はバブル全盛。何かにつけて、やれパーティだプレゼントだというご時世である。僕自身は両親から温かく祝福されてきたので、誕生日にはそれなりのスペシャル感を持っていたが、そういうのとは違ったハデさがあった。彼女たちには僕の考えている誕生日では物足りないか、それとも誕生日なんかにこだわるのはクールじゃないかのどちらかだと思っていた。
▼本当のところ、彼女たちはどう思っていたのだろう。三人のミューズのうち一番大人だった人は、誕生日も知らない。ただ最後に電話で話した時、「いつのまにかもう30になってしまったわよ」と言ってたから、全く年齢が気にならないというわけでもないだろう。最愛の彼女は、フラれてひと月以上もたった九月の留守電に「おめでとう」のメッセージを入れたら、翌日向こうから電話をかけてきたから、感覚は一番近かったかもしれない。
▼高校の同級生は、三人の中では一番スノッブというか、誕生日をイベントにする当時の風潮に合っていたような気がする。でも誕生日の当日には用事があるとかで会えなかった。きっと僕は本命ではなかったのだろう。もちろんこれは僕の思い込みだし、順番としては彼女が最初だから、子供っぽくて当たり前だ。若い頃は、人は一年や二年で大きく変わるものだ。
▼3年の九月に彼女の誕生日を祝えなかったことで、この恋に終止符を打つべく僕は旅に出た。既に後期は始まっていたが、無視して一週間ほど東北を回ると、戻ってきてももう僕は講義には出なかった。他の人はどうか知らないが、僕は恋をすると勉強が手につかなくなるということはなかった。むしろ気力が充実して何事にも意欲的になった。その分失恋すると何をする気も失せてしまった。前期それなりに頑張ったその年の単位は全てパーになった。
▼下火になったのか、最近はあまり耳にしなくなったが、諸外国に合わせて日本でも九月入学制を導入するという話が一時期盛り上がった。もし新年度が九月からだったら、そのことが多少は夏の失恋の痛手を癒す気分転換の材料になったかもしれない。自暴自棄になって途中で放り出すことはあっても、これから始まる一年を最初から棒に振るというのはかなり勇気がいるからだ。
▼そして春の恋は、彼女にいいところを見せたいという動機が、マンネリ気味の学習意欲に再び火を点し、うまい具合に転がったかもしれない。その意味では九月入学制も一分の理はあると思う。

木曜は鶏とサツマイモのホクホク煮。

金曜は鶏の照焼風炒め。

土曜はアスパラの肉巻にジャガイモとインゲン炒め。
▼10時の打合せから帰って(結局完オフじゃないのね)テレビをつけると「うちくる?」にDJKOOが出ていた。TRFのメンバーで、彼が一番露出するようになるなんて誰が想像しただろう。この人誰かに似ている。内田裕也かと思ったけどバラエティに出るくらいだからそこまでトンガってない。そうだ、かまやつひろしだ。この人ルックスというより立ち位置がムッシュかまやつに似ている。彼は芸能界のポジションでいう「ムッシュ」の正統な後継者なのだ。なんの話だったかな。そう、なんにしろ九月は再スタートの季節である。