素顔のままで?

先週末は、かなり前から雨の予報だったが、前日の金曜になって傘マークが消滅。見事に裏切られた。最近の天気予報がこれだけはずすのもめずらしい。まさに女心と秋の空だね。この調子で直撃予報の台風も消えてなくなればいいんだけど。
▼おかげで土日はてんてこまい。朝噛んでいたガムを噛んでいないことに、うちに帰って気づいたが、いったいいつ、どの時点で口から出したのか、どんなに考えても思い出せない。というのが二日続いた。全くどうなってんだろうね。僕の頭は。CTとってもらった方がいいかも。
▼そのガムがつまったのか便通がよくない。冗談はさておき原因は睡眠不足だろう。とにかく毎日がめまぐるしくて知らぬ間に日がたっている。課題は山積。不安と心配事でよく眠れない。するとそのうち便秘になりカゼをひいた。カゼは万病の元と言われるが、万病の元のもうひとつは便秘で、万病の元の元は睡眠不足である。
▼下の子は先日運動会があり、応援団長の上に選手宣誓までしたそうだ。平日開催なので僕は観に行けなかったが、観に行った妻に「あんた親冥利につきるね」と言ってやった。まさに中学生の代表選手、ミスター中学生である。小学校の時も象徴小学生だったけど。誰でも享受できるわけではない。この子の親でよかった。
▼上の子は免許を取得した。これでもう一人前の大人である。あとは大人としての責任を自覚してほしい。夏休みが終わっても、彼はもう大学には戻らない。やめて期間工に応募するらしい。うちから通える大学に入り直すための学費をためるそうだ。名前を書けば合格、お金さえ納めていただければそれで結構というような大学の学費を負担することを、僕が拒否したからだ。一度はしたいようにさせた。二度目はない。
▼しかし期間工までして入るような大学かね。これが女子なら短大に入るために売春するようなもんだ。もうとっくに僕の理解を越えている。だがしかし子供は親の背中を見て育つ。仕事とはいえ、ほとんどうちにいない。従って子供の相手もしない。たまにいる時はテレビばかり見ている。それで子供だけ高尚に育つ方がおかしい。
▼隣の隣の二世帯住宅があっという間に形になった。今は家も工場で作られる時代だ。現地では組み立てるだけなので早い早い。現場で人が動いているところを見たことがない。基礎、壁の組立と、それぞれの工程のたびにそのままの姿でしばらく放置される。数か月という工期は、高い値段に対する申し訳で、そうでなければ一週間あればできてしまう積木だ。
▼カゼのウイルスと同時にパソコンもおかしくなった。有料のウイルス対策ソフトの有効期限が近づいてきた途端、様々なセキュリティソフトの広告が次々に画面に現れる。ウイルスプロテクトウイルスだ。そんなこと、いったいどうやって調べるのだろう。世界の果てのたった一台のパソコン所有者にまで、追跡の手はどこまでも伸びる。
▼この社会では何もしないで立っていることはできない。放っておけば自動的に課金システムにの組み込まれ、あの手この手で丸裸にされ、気がつけばケツの毛まで抜かれている。これらのシステムから身を守るには、常に気を張っていなければならない。油断すればやられる。それこそ眠ることもできない。
▼夏前に水虫の薬が切れたが、医者に行くヒマがなかった。先日やっと皮膚科に行くと、お医者さんが「実は先週新しい薬が出たばかりなんですよ」と言う。なんでも爪の上から浸透するタイプのものらしい。「すぐによくなるわけではありません。一年はかかります。それと月に一度受診しないとお薬は出ません」シーパップと同じ仕組みだ。
▼岸政彦の「街の人生」を読了。ゲイの日系人、ニューハーフ、摂食障害の女性、風俗で働く母親、ドヤの生活保護受給者が、この順でインタビューに答えている。著者のあとがきに「人の生活史というのはなんて面白いんだろう」と書かれていたが、読むのに意外と時間がかかったのは、登場人物の並びのせいだ。自分と縁のない人に感情移入するのは難しい。
▼例えばストレートの僕は若い頃、飲めば男女を問わずみなオカマバーに行きたがり、口をそろえて「おもしろい」と言うのが理解できなかった。ブ男のぶっちゃけトークやピンクレディの完璧な振付を見せられてもアクビをかみ殺すしかない。けど母子家庭のデリヘル嬢や西成のおっちゃんの事情なら多少はわかる。
▼この本に登場する5人の共通項はなんだろう。きれいな言い方をすれば、自分らしく、あるいは自分に正直に生きている人たちだ。だが現代社会は素のままの自分でいられるほど甘くない。彼らは立っているのがやっとの人生だ。僕もよく社長に「もう人のよさをウリにする年じゃないだろ」としかられる。
▼この世界で生きてゆくには、不利になる素性は隠し、顔で笑って心で舌を出すようなクールさが必要だ。その意味で彼らは一見社会のマージナルに住む異端のように見えるが、その実多数派である。このような形で掬い上げられることがなければ、誰もその声に耳を傾けようとしないサイレントマジョリティのひとりだ。

数日前の初サンマ。

そして秋分の日の今日は家族でスシロー(長男は不参加)。