国際化の荒波

なんとも気持ちのいい朝である。暑からず寒からず、ちょうどいい。習慣で5時には目が覚めてしまうが、ややあって休みだと気づく。なんともいえない安堵感が襲ってくる。
▼三週連続で日曜日に休めているが、年のせいか疲れがとれない。8月に一日しか休めなかったツケが響いている。こんなことをいうと、毎日終電、時々朝帰りの公務員ブロガー女子に笑われそうだが、彼らには絶対に土日が休みだという強みがある。週5なら僕も頑張れそう。さらに盆暮れGWと年に三回の長期休暇に大量の有給もあるとなれば鬼に金棒だ。要はメリハリである。
▼さて、僕にはないが、普通の人には年に四回目の長期休暇に加わったシルバーウィーク。下の子は長距離の合宿で不在。上の子は隣市での就職試験で朝早く出ていった。今日は刑務官。申込んだ後で職業案内のビデオを見て後悔したらしく、「交通費がもったいない」と行く前からまるでやる気がない。ていうか考えがまるでない。公務員専門学校で受けられるところをただ端から受けてるだけ。
▼公務員の就職戦線も一般と同じく、市役所など人気の高いところから順に「縁故で」決まっていく。大勢は夏までに決し、今学校は秋休みらしい。残るは刑務官、警察、そして自衛隊である。特に自衛隊の勧誘は凄まじく、担当者がわざわざ出向いてきてひとりひとり本人に意思確認しているという。バカな専門学校生もさすがに警戒して「自衛隊だけはヤバイ」と話しているそうだ。安保法案の影響はこんなところにも表れている。
▼先の東北大震災で成果を上げ、評価も高い災害派遣に役割を限定していれば一定の希望者もいるだろうが、頭のいい人でもわかりにくい、自国防衛でもない危険な「国際貢献」が任務に加われば、進んで手を挙げる若者なんているはずがない。早晩募集は強制的になる。徴兵制でなくても、東京五輪が終わる頃には経済的に、つまり多くの若者にとって半強制的に自衛隊しか道がなくなっていることを国は見越しているのかもしれない。
▼妻がヨガに行ってる午前中はテレビとネットであっという間にすぎる。とにかく休養休養。帰宅した妻と南アフリカから歴史的金星をあげたラグビーW杯を観戦。午前のニュースで既に結果を知っているので安心して見れる。ジャパンと言っても半分以上外人だ。キャプテンも監督も外人。プレースキッカーの五郎丸が日本人でなけりゃどこの国かわからない。まあ国技の相撲だって横綱大関をモンゴル人が独占して違和感ないけどね。
▼僕がラグビーに熱中したのは中学から高校の頃、今から30年前のことだ。当時の大学ラグビーは平尾、大八木擁する同志社全盛期。伝統の早明戦は満席。社会人は新日鉄釜石から神戸製鋼に覇権が移りつつあった。大東文化大や帝京大が力をつけ、トンガパワーが流入する前のことだ。グローバルに通用するかどうかはともかく、国内でのラグビー人気は現在より上だったと思う。
▼久しぶりに前後半まるっと観戦して、ラグビーも変わったなと感じた。スポーツ全体に広がるビデオ判定の連発。負傷したわけでもないのに次々と選手が交代する。「魔法のヤカン」なんてもう死後かもしれない。ラックからスピーディに左右に展開してプレーがなかなか途切れない。僕が知っているラグビーはもっと緩慢なものだった。ほとんど別のスポーツといっていい。僕がラグビーから離れていた30年の間にラグビーは国際化したのだ。人は何にでも慣れるものだ。いい方向の変化なら歓迎しないとね。
▼妻と買物に出かけ、ブックオフで居間に転がっていた本を売る。いくらにもならない。片づけるという感覚。ショッピングセンターで夕食のおかずを物色。目的はサンマ。値段は一尾150円まで下がっていたが痩せている。隣のショーケースの太ったやつは倍だ。つまりはまだ300円のまま。今年はもうこのままかもしれない。献立をキノコたっぷりパスタに変更する。

▼昨日は子どもたちがいないので夫婦で外食にしたが、SW初日の土曜ということでお目当ての店がどこもいっぱい。最終的に激安でない中華料理にした。食べ盛りの子どもがいなければこの方がいい。



未明の安保法案成立まで起きてテレビを見ていたので帰ってすぐに爆睡。デモの参加者は今日はどうしているのだろう。SW明けにはまた何事もなかったように日常が戻ってくるのだろうか。何もかも既定路線、何もかも政府の思惑通りだ。
▼さらに日付が変わる前、金曜恒例のドキュメント72hは東京ビッグサイトの夏コミを取材。コミケの人出は三日間で50万。デモとはピーク時でも数字が一桁違う。アベチャンに高を括られても仕方あるまい。法案が成立することは昨年末の選挙時点で決まっていたことだ。今さら騒いでどうする。折しも原発再稼働に反対する42才の自称ミユージシャンがJR連続放火犯として逮捕された。デモが熟慮の末の本気の行動か、それとも単なる自己実現のための幼稚なパフォーマンスにすぎないのか、次の選挙ではっきりする。