感謝の気持ち

昨夏の今頃は既に涼しい風が吹いていたような気がするが、今年はいつまでも気温が下がらない。迷走する台風が酷暑の夏の空気を持っていってくれるだろうか。
▼さて、リオ五輪の熱狂も過ぎ去り日常生活が戻ってきた。やってる最中はそればっかり。終わればすぐに忘れ去られるのだから現代社会の刹那ぶりには驚くばかりだ。現代人は誰かが考え出しシステム化したスペクタクルを、次から次に見せられることで、ようやくおのが不安と不満を一瞬だけ忘れることができる悲しい生き物なのだ。
▼さて、ここらでリオ五輪を総括しておこう。開催前はスタジアムの建設が間に合わないだの水が汚いだの出ないだのかなり心配されたが、蓋を開ければあっという間の17日間。過去の五輪と比べても遜色ないように見えたが、実際にどうだったかはテレビを見ていただけではわからない。まあ五輪は運用も大事だが、あくまで本筋は競技である。それは東京だって同じことだ。
▼その競技だが、日本は過去最高のメダル41個を獲得する大健闘。前回ロンドンの37個も過去最高だから、長期的な強化が実を結んでいると言っていいだろう。4年なんてあっという間だ。リオが終わってから準備していたのでは間に合わない。それもこれも日本が大国だからこそできることだ。その意味では米国や中国やロシア(のドーピングも含む強化)と似たようなもんかもしれない。
▼やっぱりなんか素直に喜べない。萩原も内村も愛ちゃんもタカマツペアも吉田沙保里も、活躍した選手ほど幼少期からただそれだけをやってきたスポーツエリートたちだ。彼らの努力を否定するつもりはないが、日本に難民代表や貧民窟出身ようなメダリストはひとりもいない。体操に始まりバトミントン、女子レスリングと逆転劇が相次いだものの、本当の意味で逆境を這い上がってきた選手はひとりもいない。
▼五輪に限らずサッカーでもなんでもそう。もし今日本が内戦状態ならメダルどころの話じゃないだろう。素直な下の子はアフリカや中東の現状を紹介するテレビを見るたびに「ヤバイよここ。ああ日本に生まれてよかったあ」としみじみもらす。親バカかもしれないが、彼が正しい。日本は恵まれている。選手自身がようやくその事実に気づいて感謝の言葉を口にするようになった。
▼今週は週中から3日連続で会合があってブログの更新もままならなかった。重なるときは重なるものだ。木曜は会社の総務部長の送別会。バブル崩壊後のゼネコン不況時に大手をリストラされ、同期入社で早々に脱サラして当社の社長になっていた先代をたよって移ってきた。ゼネコン時代の海外赴任歴は10年を超え、数か国語はペラペラらしい。
▼当社には彼以外にも既に退職した人を含め、僕が知る限り大手ゼネコン出身者が6人はいた。うち半分は一級建築士だ。彼らと地場採用の若者たちとでは持っているスキルが違いすぎて、同じ会社に同居していることがほとんど冗談に思えるほどだが、どんなに優秀でもリストラの憂き目に会い、ローカルの土建屋の若造の方がよっぽど羽振りがよかったりするのが世の中の不思議である。
▼金曜は業界団体の定例会。例によって社長といっしょに参加。来賓に客先の幹部が出席されるのだが、いつの間にか半分以上知らない顔になっている。大企業の管理職は2,3年ごとに異動があるので、5年もするとすっかり入れ替わってしまう。一生懸命挨拶をしているうちに時間がきて一口も食べないうちにお開きになってしまった。
▼その後大手設備メーカーの所長に誘われて高級クラブに流れる。誘われるままについていき、支払いまでしてもらう一番悪いパターン。相手が若くて腰が低いので勘違いしていたが、どちらがお客様かは考えるまでもない。大失態だ。人を見られたかな。なにしろ先立つものは金だ。使う使わないは別にして、何があってもいいように最低二ケタはサイフに入れておかないと。いくつになっても勉強だ。遅いか。
▼土曜は客先の担当者の送別会に部外者としてただ一人参加。定年延長で65まで勤めた担当者に、延長せず5年前に退職した同期のOBが二名。このお二人にも随分可愛がっていただいた。それから現役が四名に僕の計八名でお肉屋さんのすき焼きを囲む。担当事業所にもいろんな部署があるが、この課の人たちが一番ウマがあう。数年前にも一度飲み会に誘っていただいたが、その時以来久しぶりに時がたつのも忘れる楽しい会合だった。
▼今日は日曜出勤。夕方妻と成城石井に買物に行く。休みがなくてもこういうちょっとしたデートが気分転換になる。夕飯はそのエキチカで買ってきた焼鳥にピーマンの肉巻きにもやしサラダ。

いい年していつまでも一人前の大人の振る舞いが身につかない僕だが、嘆いてばかりいても仕方ない。いろんな人がいていろんな人生がある。その中でも僕はけして悪い方ではないだろう。少なくとも不幸ではない。気遣ってくれる仲間がいて、応援してくれる人もいる。なにより家庭に恵まれた。そのことに感謝しなければ。