なんか変

食後にNHKニュース9を見ていた時のことである。脱北してきた元朝鮮人民軍の兵士たちが、黄海付近に展開する北朝鮮の兵力を証言する内容のニュースに変わった。ヨンピョンド砲撃事件の衝撃も冷めやらぬ北方限界線付近に配置されていた元人民軍兵士の貴重な証言である。
▼昼間カーラジオでこのニュースを一度聞いていた僕は、何気なく顔をあげた。するとラジオで聞いた時には感じなかった妙な違和感がある。マイクを持った数人の脱北兵たちが、全員迷彩服を着ているのだ。彼らは現在韓国軍に所属しているのだろうか?まさかね。じゃあいったいこの迷彩服は何?
▼映像はその後、緊張の続く38度線で警戒にあたる韓国軍兵士の模様を映しながら、北朝鮮の次の挑発行為に対抗しつつ刺激しない(どっちだ?)みたいなナレーションで終わったが、僕はそこでもまた違和感を覚えた。
▼ラストはこちらに走ってくるや、鉄条網の下に腹ばいになって銃口を構える兵士の、迷彩に塗られた顔にクローズアップして終わるのだが、その迷彩顔の兵士の銃から遠い方の目がパッチリ開いているのだ。銃というのは両目を開いて標的を狙えるものなのだろうか。逆に照準を合わせている方の目をつむってたりして。
▼こうしてみると、あるひとつのニュースソースを料理する時の、ジャーナリズムというルーチンとなったひとつの職業の仕事ぶりがよくわかる。韓国政府か軍が用意したプレスリリースの場に、迷彩服を着せられて現れた元人民軍兵士の姿をそのまんま流す一方で、最前線の緊張を表現するには、はいつくばった兵士が銃を構える絵が欲しい。
▼ジャーナリズムの使命感も何もあったもんではないが、気持ちはわかる。いつもいつも緊張してたらもたないもんね。それが仕事である以上、どうしたってある程度「処理する」感じにはなる。どんな職業だってそうだ。
▼ただし映像には何もかも映っていることを覚悟しなければならない。それともこんなことをなんか変だなと思うのは僕だけだろうか。