厳冬

長男が受験期を迎えている。人生で初めて味わうプレッシャーに、押し潰されそうな不安を感じていることだろう。ついこの前自分も通ってきた道であり、誰しも通る道である。特別な感情もなく、月日だけが流れてしまった。
▼親のひいき目ではなく、けして出来の悪い子ではなかったが、この間成績は下がり続けた。特に勉強しろとか、いいとこを目指せと言ってこなかったばかりでなく、夜遊びや自堕落な生活すら注意しなかったので、責任の一端はこちらにもあるかもしれない。
▼なにもかも自由に任せるには、まだ早過ぎる年齢だったかもしれない。ある程度早期に、必要なことを言って導いてやるのも親の役目なのかもしれない。
▼息子に偉そうなことを言えるほど立派な生き方をしてこなかったという負い目が、子供と真剣に向かい合う機会を奪った。目的意識もなくやみくもに勉強してもいずれ行き詰まることや、社会に出て通用するのは学歴なんかじゃないことを肌で感じてきたことも、受験勉強に重きを置かない思想を助けた。
▼しかし人生において定期的に訪れる関門に、逃げずに立ち向かう姿勢くらいは教えてもよかったかもしれない。列島をこの冬一番の寒波が襲った今日、冬休みの初日、初めて話らしい話をすると、息子は泣き出した。「なんでもっと早く言ってくれなかったの!」話のわからない子ではない。せいぜい苦しめばいい。