プロファイリング

最近テレビドラマの世界では、犯罪心理学がちょっとしたブームである。北川景子主演の「LADY」ゲゲゲと藤木直人コンビの「コントロール」帝王船越の「ホンボシ」。これは、昨今の事件の犯人の動機が、見えにくくなってきていることの裏返しなのだろうか。
▼以前ブログで、よく凶悪事件について感想を書いた。佐世保猟銃乱射事件、秋葉原無差別殺傷事件、中大教授メッタ刺し事件など、犯罪類型的にはアモク(共同体から疎外された者が自らの名誉を回復するために社会全体に対して行う復讐劇)に分類されるものが多かった。
▼今でこそ僕は、善良な一市民としてまっとうな社会生活を営んでいるように見えるが、妻と巡り会って結婚していなければ、今頃どんなことになっていたかわからないという思いは強い。その意味で前述のアモクや、あるいは中年男性の性犯罪などについて、他人事のように手放しで非難する気分にはなれなかった。
▼ところが、ここのところこの種の独身男性特有の犯罪をあまり目にしなくなったような気がする。それが僕の側の変化なのか、世の中の変化が犯罪性向に微妙な影響を与えているのか、あるいはその両方なのかはよくわからない。
▼ちなみに今一番気になるのは、金沢の27歳主婦の行方がわからなくなっている件に、36歳NHKの契約カメラマンが関与しているという事件。僕もそうだが、この事件を最初に耳にした人は、普通は浮気や痴情のもつれを疑うだろう。ところが報道によると、今のところ金銭トラブルの線が濃厚である。カメラマンは知人である主婦に投資話を持ちかけ、数百万を預かっていたという。
▼あるいは目黒の老夫婦殺傷事件。殺害された被害者が何度も執拗に刺されていることから、当初怨恨の線が強いと思われていたが、逮捕された男の供述をそのまま信じるなら、動機は金銭目当てで被害者と面識はないという。
▼あるいは一年ほど前の千葉女子大生キャバ嬢殺害事件。当時僕はブログで、求愛を拒絶された客の逆切れ殺人とプロファイルしたが、結果は空き巣強盗だった。
▼こうなるともう完全に僕の理解の範疇を超えている。同情とか身につまされるどころか、何かバリアのような壁に跳ね返される感じで、感情を寄り添わせることができない。僕の認識では、お金に困ることと人を殺すことは違う次元に属しているので、短絡のしようがないからだ。
▼実のところ、件のカメラマンと主婦に男女の関係があったのかなかったのか、本当のところはわからない。福島県からわざわざバスに乗ってたどり着いた目黒の老夫婦宅が、全くの偶然の産物とも考えにくい。その前に押し入った老婆は命までは取られなかったのに、キャバ嬢はどうして殺されたのか。さらには遺体に火までかけられなければならなかったのかといえば、いまわの際に男と女の間にしか起こりえない感情のやりとりがあったがゆえの惨劇だったのかもしれない。
▼事態は常に複雑で、事実はきっと全ての要素が含まれているのだろう。だが昨今の犯罪において、お金の問題がより直截に重要なファクターとなる傾向にあることもまた事実だ。そのことがいまひとつピンとこないのは、僕に問題があるのかもしれない。