春の歌

仕事が一段落し、久しぶりに休みをとった。こぬか雨が降ったりやんだりのはっきりしない天気だ。ここのところ太陽の巡りは、週始めの雨の後、週半ばにぐんと冷え込む繰り返しで、まさに三寒四温という言葉がピッタリだ。少しでも燃料事情が好転し、被災地の方々が明日以降予想される厳しい寒さをしのげることを心から願う。
▼めったに休めないので、貴重な休日は映画に行ったり子供と釣りに出かけたり、なるべく無駄にしないよう心がけているが、今日は妻がバイトでいない。あいにくの天気に子供たちも三々五々どこかに散っていった。
▼僕はひとり部屋にこもり、何年ぶりかでホコリを被った音源をひっぱり出した。ある日突然小さなポータブルMDプーヤーを、妻は勝手に買ってきてひとりで聞き始めたのだ。
aiko大塚愛竹内まりやケツメイシ宇多田ヒカル浜崎あゆみスピッツ…妻の小さくて丁寧な文字を見ながら、狭い台所でMDを聞く妻の気持ちを想った。もう四年も五年も前のことだ。フタが壊れて開かなくなった機械を冷蔵庫の上から下ろし、居間のテーブルに置いて一枚を無理矢理突っ込んだ。
ケツメイシ「はじまりの合図」気分が高揚する。そして「幸せをありがとう」震災を気づかって式を延期した心優しい友人を想う。MDを入れ換えてまた一枚。スピッツの「春の歌」サビの部分で涙がこぼれた。知らず知らずのうちにボロボロに錆びついていた心身に、音が、声が染み渡ってゆく…カラオケ行こっと。