キモチワルイ

四月に入って今までの忙しさが嘘のように仕事が引けてしまった。この土日は数カ月ぶりに連休となり、ランチと買い物などして妻と二人で過ごした。
▼だがここでも震災が陰を落とす。土曜の夕方、妻とのデート中に某企業から震災の復旧要請が入る。月火できるだけ人を集めて茨城まで来てほしいとのこと。即座に上司に指示を仰ぐと「現地を見ないと始まらないから明日行ってこい」と言うので、そのむね先方に伝えるとあまり芳しくない返事。メーカーの応援は日曜いったん引き上げなので現地スタッフしかいないと言う。これが第一のひっかかり。
▼僕も上司にそう言われなければ人の確保が最優先で自分が先発で行くことなど考えてもいなかった。とりあえず経理が閉まる前に私服のまま会社に寄って仮払いを受け、急いで自宅に帰り三日分の着替えをバッグに入れてまた会社にとって返す。いくら暇でも三、四日地元をあけるとなればやっておかなければならない事務処理もある。終わり次第現地に向かうつもりだった。
▼夜7時を回ったところで先方から二度目の連絡が入り20〜30名の人員のめどがたたなければわざわざ遠方から来る効果も薄いのでやめましょうという話。上司に二度目の指示を仰ぐのと下請に片端から電話するも誰も出ない。つながっても土曜に月曜の予定は埋まっているのが当たり前。
▼この時点でよその仕事が入っているのにそれをやめてこっちに来いというのは無茶な話だ。動員するなら当社の仕事で使う予定の業者を現場を止めて持っていくしかない。そして僕にその権限はない。遅ればせにつながった上司はあっさり「無理だから断れ」の指示。後ろ髪引かれる思いで連絡すると「わかりました。あなただけ来てもしょうがないから明日来るのはやめてください」とのこと。これが第二のひっかかり。
▼そして今日、いつでも行けるようにそのためだけに出社すると上司は「もう遅い。なんで土曜のうちに行かなかいんだ!」の叱責。心折れて帰宅。結局土日月と全く休んだ気がしなかったが、それよりも日頃仕事を世話してやってるつもりでいた下請の返事がみなつれなかったことが第三のひっかかり。
▼背に腹は変えられないのはわかるが「月火は無理だけど復興の仕事は願ったり。二日だけじゃなくて長期のはないですか」とか、前日まで僕に仕事をねだっていて水曜からのまとまった仕事を与えた人に「そんな遠くに行きたくない」と言われたのには参った。
▼人は勝手だ。たぶん僕が一番まともな人間にちがいない。勝手に突っ走らないことを除いて。経費を手にすると同時に後先考えず現地に行ってれば今頃こんなキモチワルイ思いをせずに済んだかもしれない。全ての正統な手順を踏み、全ての人の思惑を斟酌してできることは少ない。