YAH!YAH!YAH!〜我が家にパソコンがやってきた

季節が春に向かって一気に転がり始めた。もう後戻りすることはないだろう。つい先日までのあの凍えるような寒さはなんだったのか。下の子は今日始業式、上の子は明日入学式だ。桜もびっくりして慌てて花をつけている。なんだかんだ言っていつもと変わらぬ春の風景だ。
▼それでも妻とデートしていた日曜日までは、花曇りというか花冷えというか、まだずいぶん寒かった。だが不思議と先月の寒さと寒さの質が違うのだ。天気予報の最高最低気温の数字は同じでも、月が変わるとフリースがとたんに重くなる。
▼妻と二人でショッピングモール内のユニクロで春物を吟味する。「この店に四十を過ぎた男の着る物などない」と来る度につくづく思うのだが、僕の経済力ではユニクロに寄った帰りにイオンの惣菜コーナーで晩酌のアテを買うほかに選択肢はあまり多くない。
▼今日、我が家にパソコンがやってきた。正確にはインターネットの回線端末機が注文から二週間たってやっと到着したのだ。長男の卒業入学祝いにパソコンを購入したのは二週間前のことだったが、今日まで家族の誰も触れようともしなかった。
▼つまりはパソコン=ネット機能であり、パソコンを買うということは、パソコン本体の品代にとどまらず、将来に渡って通信費という高額なローンを背負込むことになり、ケータイと全く同じことなのだ。そして現代社会においてケータイを持たないという自由はない。
▼パソコンを買うにあたって僕が唯一気にしたのは、月々のローンがいくらかという点だけである。もちろんパソコン本体はローンではない。それはおじいちゃんが払ってくれる。ローンとは月々の通信費のことだ。案の定パソコン本体の割引特典がビッグな通信会社ほど毎月の通信費が高い。ケータイの0円端末と同じ仕組みだ。
▼最大六万円の本体値引もある中で、僕は割引特典なしのワイヤレス回線を選んだ。ネットを利用する限り永遠に続くローンに比べれば一時金の六万など微々たるものだ。「賢い買い物だ」と内心ご満悦でカウンターに向かったが、最後にとんだ落とし穴があった。
▼その大手電機小売チェーンは、通信費の銀行引落とし手続きを扱っていなかった。通信費の支払い手続きにクレジットカード以外の選択肢がないのだ。ここで顧客はふるいにかけられる。体のいい信用調査だ。通信費が通信費という名のローンであることを改めて思い知らされた。
▼これが自由で多様性に富むと言われる消費社会の現実であり、実態として我々はほとんどイオン、ユニクロソフトバンクの奴隷ではないだろうか。