晴耕雨詠み

台風2号の影響もあって気象庁は昨日、関東以西の梅雨入りを発表した。明日は下の子の最後の運動会だけど絶望的だな。中学も高校も平日開催だから実質運動会は小学校まで。僕自身この時期比較的ヒマということもあって、マッタリと過ごせるこの日を毎年楽しみにしていたのだが。
▼それにしても例年よりずいぶん早い梅雨入りである。梅雨と言っても僕には中休みがかなり長いという印象がある。実際本格的に降るのは七月に入ってからで、明ければ即夏。だから梅雨なんてまだひと月以上先の話だと思っていた。
▼大陸性高気圧と太平洋高気圧に挟まれた梅雨前線が、天気図の上で日本列島を上がったり下がったりしている状態を梅雨と呼ぶのなら、確かにその間ずっと梅雨には違いない。だが実際には現象として雨が降り続かないと梅雨の実感はない。またよく蒸し暑いと言われるが、陽射しのない梅雨の間はむしろ肌寒い日の方が多い気がする。
▼今の時期なら「梅雨入り」と言うより「梅雨のはしり」と言った方が相応しい気もするが、今回のように台風がいっしょだと、「はしり」にしては雨が本格的にすぎる。自然現象をうまく言葉で捉えるのは本当に難しい。
▼刻々と移りゆく自然の様態をうまくつかまえるには、やっぱり俳句が一番だ。僕の俳句に対する印象は音のない世界。ほとんど写真に近いかもしれない。

五月雨や破竹の頭濡らしをり

ハナミズキ手裏剣のごと咲きにけり

▼特に技巧を凝らさなくても、目の前の風景を切り取るだけでなんとなくサマになる。これが写実の力だろう。自然には、そのままでも、遊びに夢中になっている子どもの顔を上げさせ、思わず茫然と立ち尽くさせる力があるのだ。
▼激しくはないが、間断なく降りしきる雨の中、午後から仕事関係の告別式に出席。

会葬の列に広がる傘の花

梅雨空に葬儀の尻尾に加わりて

こんな句は、きっと誰かがどこかで詠んでいるにちがいない。
▼片道一時間半、式も一時間半あって、ほぼ一日仕事になった。故人とは生前面識はなかったが、これも何かの縁だと考えよう。礼服を脱ぐためいったんうちに帰ると、もう仕事に戻る気がおこらない。ガードマンに頂いた最後のハラミとワサビをアテに缶ビールをあける。

そしてそのまま晩酌に突入。追加のアテは温泉おぼろ豆腐。単にレンジでチンしただけだけど温泉と言った方が語呂もよくうまそうだ。

そして本日のメインは給料前の月末乗り切りメニューということで、野菜たっぷりラーメンに混ぜご飯。混ぜご飯はオニギリにしてくれたのだ。具は干しシイタケにサバ缶。

▼ガードマンのハラミも最後だが、職場結婚だった妻も、会社の「最後のハラワタ」だって当時みんなによく言われたっけな。その時はよくわからなかったけど、今ならわかる。

人肌に温められし奴かな

アスパラの青き匂いにむせにけり

豆腐食い昨夜の妻を思い出す

気分はほとんど故、森澄雄先生だ。この人俳句界の巨星というより、ただの愛妻家だもんなあ。