自分の会社に置き換えて考えればわかりやすい

ここ数日国会周辺で繰り広げられているゴタゴタの正体は、権力闘争以外の何物でもない。こう書くと、「そんなことわかってる」と言われるだろうし、「震災復興に一致団結しなければならない時に何をやってるんだ」という声もよく耳にするが、本当にわかっている人って意外と少ないような気がするので、禁を破って政局について語ることにした。
菅直人が一国の首相の器でないのはともかく、これだけの批判を浴びて 何故辞めないのかみんな不思議に思いませんか?気になる在任期間もとっくに鳩を越えたし、パフォーマンスだけは一流の彼が国民に引き際のよさをアピールするチャンスはいくらでもあったはずなのに、彼をしてここまで総理の椅子にこだわらせるものは何なのか。
菅直人の政敵は、谷垣総裁以下野党自民党議員ではなく、身内であるはずの小沢一郎鳩山由紀夫以外にいない。どんな業界だって、同業他社と鎬を削っているように見えて、その実ほかの会社のことなんかホントはどうでもいいのだ。普通人が一番気にしているのは社内での立場だけだし、実際に各人の人生と生活に直接的に重大な影響を及ぼすのも、給料や人事など社内的な事柄だけである。
▼実年齢ではなく、同期入社だとか生え抜きだとか勤続年数だとか、総合的に見て広い意味で世代が違えばライバル関係にもなりにくい。辞意を表明した首相が敢えて「若い世代に」譲るとしたのはそういうことだ。逆に言えば同世代のライバルが共闘するのは、世代交代の機運が高まった時のみである。
民主党という業界のリーディングカンパニーの社長である菅氏が、ライバル小沢一郎復権する可能性があるうちに自発的に辞めるはずがない。そのことで会社の業績が悪化しようが、あるいは公害などの理由で社会全体に迷惑がかかろうが、自分を中心にした体制で、そうした状況を改善していく意欲があるうちは、解任動議で引きずり下ろされるまで、なんと言われようと闘い続けるのはごく当たり前の感覚だ。
▼今回の政局は、小沢一郎自民党長老政治家たちと話し合って動いた菅下ろしだという。小沢氏もまた、今の会社で菅氏が社長のうちは日の目を見ない。居続けても日の目を見ない会社にいるくらいなら、今いる会社をやめてライバル会社と手を組んだ方がマシだと考えるだろう。
▼そして鳩ポッポが、自腹で立ち上げた会社を自分の会社だと思い、代表は雇われ社長で真のオーナーは自分だと考え、事あるごとに調停に乗り出したり影響力を誇示するのも当然だし、会社の業績をトップシェアに引き上げ、あるのは資産だけで能力のない自分を社長にしてくれた小沢氏に肩入れするのも当然なのだ。
▼そして政治家のこのような仁義なき闘いは、文字通り命つきるまで続く。それはレベルは違うが会社人間が退職後に濡れ落ち葉になるのと同じことだ。多くの人にとって社会的存在たる自己と本来の自己はそんなに掛け離れたものではないだろう。ましてや政治家の場合、権力闘争に敗れる=実際に死ぬことと同じだろう。
▼小沢氏が、国民的には不人気なのに周りにいる人に心酔されているのに対し、近くにいる人ほど菅氏を毛嫌いしているのはちょうど対照的だ。これも人間的に優れているのは本当は小沢氏の方で、世間に流布しているのはマスコミが作り上げたイメージだというより、単に菅氏には社内基盤がなく、実際に社内外の資本を動かせるのは小沢氏だということだ。
▼一見好印象で対外的に評判もいいが、社内基盤が弱く人も物も動かせない、実際には何もできないという人は多い。逆にコワモテで日頃は外にあまり出ないが、いざという時に会社の資産を動員して大きな仕事をする人もいる。社員だって、会議や朝礼でいいことばっか話す社長より、実際にボーナスをはずみ、ご祝儀をくれる社長の方がいいに決まってる。
▼僕の査定では、鳩はお金を持っている人、小沢はお金を使える人、そして菅はなんにも持っていない人。そして人が誰についていくかはご案内の通りだ。菅氏は不信任案をいったんは切り抜けた。しかし本当の味方は一人もいない。菅氏を支持しているのは、同じように持てるものがなんにもない同床異夢の小粒市民政治家の集合体だ。
▼人間とはそのような存在であるということを十分承知した上で、人間やめたくなってきた。やっぱ政局を語るのはタブーだな。少なくとも妻は今日のエントリをつまんなくて途中で読むのをやめてしまうにちがいない。