正直しんどい

梅雨空に向かいて雲雀鳴きやまず

最近は雨マークも週一程度で、早くも中休みを言い出す予報士もいるが、空は常に白く、夜の間に降った雨で濡れた路面も完全には乾ききることがない。なんだかんだ言ってもやっぱり梅雨だね。
▼震災から三ヶ月が過ぎ、復興のペースが遅すぎると、現政権の対応に批判が集中している。ペースが速いとか遅いとか、復興について何か言う資格があるのは被災地の人だけじゃないかと僕なんかは思うけど、文句を言ってる人たちは何か他に目的でもあるのかな。それとも被災者の声を代弁してるつもりなのかな。それとも憂国の士のつもりなのかな。
▼一口に被災地と言っても、場所ごとに相当なバラツキがあるらしい。震災直後から何度も東北に足を運んでいる社員の印象では、特に気仙沼の惨状は筆舌に尽くしがたいと言う。がれきの撤去ひとつとっても、同じ自治体の中で、進んでいる地区もあれば全く手付かずの所もあるといった具合で、地域によって進捗はまちまちだそうだ。
▼復興のスピードが遅いのは、政府の対応の稚拙さなんかとは全然違った次元の理由もある。震災当初、所有者が行方不明で意志の確認がとれない動産不動産を、勝手に片付けていいかどうかが問題になり、復興を進めるために法的整備を急ぐというような議論があった。だが仮に法律が整備されても、人の心の整理は簡単にはいかない。
▼がれきの除去に代表される復興作業には、大型の重機が活躍する。手作業なんかでやっていたのではどうにもならないことは誰でもわかるだろう。当社からも既に十名からの社員が片付のお手伝いに現地入りしているが、全員大型の重機とセット出張。免許を持たない非主流派の僕なんか、行ったって役に立ちようがない。
▼被災地の片付けが遅々として進まないのは「重機を使って一気に一律に」というわけにはいかないからだ。その最大の理由は、八千人以上に上る行方不明者の捜索が済んでいないことによる。例えばこれから自分が重機で掘り返そうとしている地中に遺体が埋まっていると思ったら、重機のアームを突っ込んで掻き回す気になれるだろうか。
▼復興とは生きている人たちのものだ。だから復興について、犠牲者から遠い人たちほど声高に叫ぶことになる。しかし震災から三ヶ月がたち、生存者はいないとわかっていても、そのことと、もう行方不明者はいない、遺体はないものとして復興を進めることは別のことだ。復興の時間は、無関係な人がどんなにヤキモキしようと、被災地の人の心と同じ歩みになるほかはない。
▼まあ僕も何か言えた義理じゃないけど。全くため息が出る。正直シンドイ。

「ナッツが身体にいい」と、妻がうちでナッツを常備することにした。高校の頃親友が、インドの百五十才くらい生きてる世界最高齢の仙人がナッツしか口にしないと話してたことを思い出した。「ほんのちょっとの木の実を一日中ずっと口の中で咀嚼し続けるらしいよ」「ふうん」「ペースト状になるまで」「それで?」「百五十才」少し心が動いたが、平成を装った。部活の帰りにラーメン屋に寄って、そんな他愛のない話をしたっけな。
♪なんでもないようなことが、幸せだったと思う。(虎舞竜ザ・ロード