本日は写真なし駄文のみのブログかな

今日夏至は、めずらしい梅雨晴れの一日となった。朝から蒸し暑く、週末の傘マークもだんだん小さくなって、そう遠くない時期に梅雨明けとなりそうな気配だ。
▼月曜の東京自由人日記は目白椿山荘での蛍見記だった。その中で紹介されていた鈴木真砂女の蛍の句が素晴らしかったので、重複を恐れずここに再録しておきたい。

恋を得て蛍は草に沈みけり

なんという濃厚なエロチシズムだろう。たった十七音で、詩聖萩原朔太郎の傑作「愛憐」を凌駕している。
鈴木真砂女といえば次の句も有名だ。

あるときは舟より高き卯波かな

最初僕は、これをただの写実の句だと思っていた。だがおよそ文芸に単なる写生、単なる描写というものはないのだ。どんな句にも詠み人の情念が乗り移っている。鈴木真砂女の句には、どの句にも対象に仮託して己が存在を主張する強烈な個が垣間見える。
▼真砂女の句に誰もが感動するのは、それが真砂女のひとりよがりではなく、どんな人生にも卯波立つ時があることを思い出させてくれるからだ。我々は誰であれ、生きていれば一度や二度は、舟より高い波に遭遇し、叢に身を沈める蛍になる時がある。
▼おかしなことにそれは、なぜか死と隣り合わせのような、とてつもなく勇気の伴う行為になってしまう。人によってその場面は様々だろうが、普通最も一般的な現象は「恋」と呼ばれるものだ。恋の馴れ初めは、誰にとっても清水の舞台から飛び降りるようなドキドキの連続であるはずだ。
▼まあこの辺でやめておこう。俳句の解説ほど興ざめなものはないからね。百万言費やしてもわずか十七音の方がずっと豊饒なんだから、誰だってバカバカしくなっちゃうよね。真砂女には遠く及ばないが、僕も彼女に敬意を表して蛍の句を。

草むらに蛍求めて分け入れり

匂い立つ夏至の夕闇蛍舞う

▼さて、今日からしばらくの間ウチゴハン劇場はお休みとなります。理由はだいたいご想像の通りです。ウチゴハンファンのみなさんには心よりお詫び申し上げます。