嗚呼、夏祭り

7月の第三土曜は町内の夏祭りだ。朝の9時からお宮にテントをはって町内の各会が屋台を出す。僕なんかの感覚だとお祭りといえば夏祭りだが、僕の住んでいる地域では、初夏の端午の節句が一番盛大で、その次が五穀豊饒を願う秋祭り、夏祭りの扱いは一番低い。
▼僕は勘違いしていたが、主催も体育振興会で、祭り会員は婦人会や子供会など他の会と同様、やきとりとかき氷を出す一屋台担当にすぎない。しかしそこはお祭り男たち。屋台の後方に出した広大な長机はすぐに周辺各町のお祭り男の訪問を受けて一大宴会場と化し、体振の本部テントの数倍に膨れ上がって完全に主役を食っていた。
▼例年仕事でなかなか参加できないのだが、今年は定時にあがって行ってきた。かき氷のお手伝いを始めたとたん愛くるしい顔の子供が近づいてきて「財布を落とした」という。確かに見たことのある子供だが、どこで会ったのか思い出せない。「なんでオレ?」と思いつついっしょに探してやったが、だいぶ後になってようやく思い出した。ソフトボールに来てる子だ。最近こういうことがやたらに多い。脳内シナプスが秒速億兆単位で死滅してるな。
▼昼と夜の交代するマジックアワーになると、サークル状に配置されたテントの中央にお祭りの山車が引っ張り出され、即席の盆踊り会場が出来上がり。

一曲ごとに小6の男女が交代で舞台に立って模範演技をする。なかなかのものだ。浴衣姿がずいぶん艶っぽい。小6ってもう十分女だね。

大人の女性も負けてないぞ。ああやっぱり夏は浴衣だよ。
▼外もすっかり暗くなった20時には解散。それからお祭り会員は打ち上げ会場に移動する。いつもの寿司屋だ。ほぼ全員の二十数名が参加してお座敷は満杯だ。お宮ですでにたらふく飲んできてるのでもうそんなには飲めない。アテも豪華な刺盛より冷奴やサラダの方がうれしい。

それから延々夜中の23時まで長かった。趣味や仕事が違って話題に窮する時、僕は宴会芸に逃げる。けどネタも無限じゃないのでやらない日もある。するとなかなか話の輪の中に入っていけない。よくみんなこんなに頻繁に会ってて飽きないね。まあみんなこの町で生まれ育った幼なじみだもんね。僕も地元の気の置けない仲間となら毎週飲んでもいいもんな。

▼翌朝は8時からテントの片付。心配されたセミもちゃんと鳴いている。しかし今年の夏は涼しい。強いのは陽射しだけだ。風もいいが、空気そのものがサラッとしている。

どうですかこれ。これは夏の空じゃない、夏の雲じゃない。これには科学的な説明もできる。雲は水蒸気の塊だから入道雲が発達してないのは空気中の水分量が少ない証拠だ。空気が乾燥して過ごしやすいってわけだ。
▼秋風のような爽やかな風が吹く中、片付を終えたお祭り会員たちは凧揚げの練習に出かけた。さすがに僕はパス。妻に怒られちゃう。いったんお祭りに関わると家庭崩壊を覚悟しなければならないというがホントだね。