人間万事塞翁が馬

今日は月イチのSAS(睡眠時無呼吸症候群)の経過観察日。実のところCPAP(コンプレッサー付鼻マスク)は寝苦しくて使っていない。先生にその通り話すと「じゃあ検査の時飲んだ睡眠導入剤使ってみますか。それでダメなら扁桃腺を取るなり外科的方法を考えましょう」だって。今日まで45年間何もしないで特に問題もなく生きてきたのに治療をやめてしまうという選択肢はないんだな。どうやら逃げられそうもない。このままだとホントに病気にされちゃうぞ。
▼前にも書いた通り僕自身はSASを病気とは考えていない。個体の偏差だと思っている。わかりやすく言えば、背が高いとか低いとか太ってるとか痩せてるみたいなその人の身体的特徴のことだ。今は太ってる人も病気にされちゃう時代だからSASも病気なのかもしれないな。
▼こういうことは基本的には遺伝である。「背の高い低いはわかるけど、太ってる痩せてるは食生活が原因では?」と思う人もいるかもしれない。しかし縦が遺伝なら横も遺伝なのだ。少なくとも「牛乳をたくさん飲めば背が伸びる」とか、身長が食生活に左右されるのと同じ程度にしか、太ってる痩せてるも食生活に起因しない。極端な話水虫や虫歯だって遺伝だ。この場合歯を磨く磨かないが食生活にあたるのはおわかりですね。
▼うちは性格から体型まで上の子が妻の、下の子が僕の血を濃く引いた。上の子は背が高く手足が長く性格があっさりしていて甘いものが好きで食べ物に執着がない。下の子は全てこの逆。つまり背が低く手足が短く甘えん坊で酒のツマミのようなものを好みいやしい。
▼こう書くと、僕と下の子が不憫だが、実際そうなのだから仕方ない。それに個別に特徴をあげていくと身も蓋もない結果になるが、全体としてみれば僕も下の子も人好きのする、取引先や地域社会の人気者である。寸足らずなパーツも愛くるしい顔立ちと相俟って、むしろチャームポイントと言っていいだろう。何の話だったかな。そうSASの話だ。
▼SASはそれと自覚していない人が多い。そりゃそうだ、病気じゃないんだもの。前にも日本人男性の三分の一がそうじゃないかと書いたが、もっと多いかもしれない。いびきをかいたり太ってる人のほとんどがそうだ。SASの弊害でよく言われるのは、睡眠中に呼吸が止まると、脳が起きるので、本人は眠っているつもりでも実は眠っていない。そこで昼の覚醒時に突然睡魔に襲われたり、集中力が途切れたりする。特に運転中の事故に繋がりやすい。
▼しかし本当に怖いのは、慢性的な低酸素状態を解消しようと、心臓や血管が人一倍頑張るために、恒常的に負担がかかっている点だ。まだ無呼吸が認知されていなかった時代に、主に高血圧や肥満に起因すると言われていた、心不全脳卒中などの循環器系疾患は、実はSASが主因ではないかとも言われている。
▼そういえば僕の親族の死因はほとんどこれらのものだ。父も弟も下の子も無呼吸である。
足りない酸素を体中の細胞に送り届けるために懸命に働き続けた挙句、ある日突然勤続疲労で心臓のポンプが止まる。これが僕の一族の死に様だ。けどそれがどうした?だってその代りガンの家系ではなさそうだもんね。
▼僕も自由人さんの言う通り、人生は「No pain,No gain」だと思う。けど同時に「Gain,Pain」でもあるんじゃないかな。つまりは得るものがあれば、それだけ失うものもあるということだ。今回僕ははからずもSASの治療をすることになった。そうでなければこのまま70〜80くらいまで生きて、心筋梗塞かなにかでポックリ逝く平凡な人生だった確率はかなり高い。
▼もしこの治療によってSASを克服したらどうなるだろうと考えてみる。運転中に眠くなることもなくなり、QOLが劇的に改善し、脳ミソに酸素が行き渡ることで今より天才的に頭の回転が早くなり、百歳を超えるまで生きる。それと引き換えに神様は、僕の大切に思っている何を僕から取り上げるだろうと考えるとその方がよっぽど恐ろしい。
▼そんな僕が大切に思っているもののひとつ。月曜のウチゴハンは枝豆とジャガイモの明太クリームパスタにゆで卵とチョリソーの温キャベツサラダ。


そして今日は餃子に筑前煮。

超ウマイ。下の子は僕が箸を伸ばす方に手を出す。そこで煮物が食べたかったのでフェイントで餃子を食べてみせたがひっかからなかった。そうこうしてる間に里芋だけきれいになくなっていた。毎晩こんな神経戦が繰り広げられているのだ。