企業戦士とマスコミ

今日は週半ばの代休日。こうして代休がとれるのもいつまでだろう。以前は代休もとれず、昼夜勤なんてザラだったので、もうたいていのことは鼻唄まじりだともいえるし、喉元過ぎれば熱さ忘れるで、ちょっときついとまた一から気持ちを切り替えるのが大変だともいえる。人間なかなか一筋縄ではいかない。
▼今日は今年一番の冷え込みで、ようやく秋らしい体感温度となった。一日うちでゴロゴロしていたが、さすがにTシャツ短パンでは寒くてトレーナーの上下を引っ張り出した。昨日再会したCPAPのせいか頭が重く眠い。眠ってるつもりで眠ってないのが無呼吸なら、よく眠れなかったということは実際には眠ってるってことか?んなわきゃないね。
▼新聞読んだりぼんやりニュースを見たり居眠りしたり。ここ最近のトピックはタイの洪水とTPPか。洪水が中部の工業団地から下流域に広がり、エビやハードディスクに被害が拡大しているって書き方が引っかかる。ハードとエビって並記するものだろうか。子どもが小さい頃「ジラとシンバとライオンキングと…」とタイトルとキャラ名を並列していたのを思い出した。ちょっと例が違うか。
▼日経の解説によると「デルタ地帯は元々肥沃な水耕田で都市化には向かない。昔はメナム川と表記したけどメナムとは川の意味だからチャオプラヤ川が正しい」って中学の社会科か!そんなくだらないウンチクはともかく、僕なんかはまず水につかった工場に目が行く。心配なのは製品じゃない。工場の建屋でもない。中にある生産ラインだ。だって日本じゃ雨漏れで機械に水がかかっても大騒ぎなのに、水没なら全滅でしょう。水が引いたら生産再開とはいくまい。まさかつかる前に機械だけ避難したのか?
▼TPPの参加の是非についてもかなり前から議論されているが、今日の夕方見た食べ物特集ばかりのローカル番組が一番わかりやすかった。まずTPPに参加して関税が撤廃されれば現在10キロ三千円のカリフォルニア米が七百円になるという。それからスーパーに行って、牛肉やオレンジなど今でも十分に安い外国産品を3.5%、3.7%と現状の関税率といっしょに紹介していく。そして最後に米の関税が700%であることを伝える。つまりTPPとは米農家の問題なのだ。それさえわかれば十分なのに、マスコミは賛成派と反対派の動向ばかり追っかける。全くどうかしてるぜ。
▼僕の会社の社長は社長になる前の営業本部長時代、「テレビも見ないし新聞も読まないから世の中の動きが全くわからない」と豪語していた。社長によれば「忙しい人に天気の話したら怒るだろ。ニュースなんて天気の話みたいなもんだ。学生や評論家ならともかく我々ビジネスマンにそんな世間話してるヒマはない」ということだ。社長になった今でこそさすがに新聞を読む姿を見かけるが、朝は誰よりも早く会社を飛び出してゆく。そして仕事の情報を持って営業にきた銀行マンに「そんな新聞で読んだような誰でも知ってる話するならわざわざ来ないで電話で金借りてくれって言え。お互い時間の無駄だろう」と怒って応接室から出てくる。
▼確かに新聞やテレビで目にするニュースは、ことビジネスに関しては僕が既に知っていることばかりだ。企業がプレスリリースする頃にはプロジェクトの細目は決定し、受注業者も決まっている。その段階で情報を得てももう遅い。それはもう情報ではない。ライバルの同業他社より早く新規事業に関する情報を聞き出す。情報を持っているキーマンに近づく。聞き出せるだけの人間関係を日頃から築いておく。それが営業マンの仕事だ。こう言ってはなんだが、マスコミ関係者とはモチベーションが違う。
▼その昔某業界紙の記者をしていたことがある。関連企業に取材にいくのだが、本当の目的は広告をとることだ。その頃の僕はそのスタイルに驚いたしなじめなかった。広告担当者に「広告は広告でとりに行ってください」と言った。しかし記者の給料も新聞の印刷代もその広告費からしか出てこない。広告の枠を埋めたり、購読者の勧誘から完全に切り離されていることが、記者の取材の自由を保障しているのだが、同時に記事のヌルさの原因になっているような気がする。そのうち新聞の読者は学生と学者と年金生活者だけになるだろう。現役の人に必要な生きた情報がないならそうなるしかない。