暮れマニアのひそかな楽しみ

12月にふさわしい厳しい冷え込みが続く。なんやかや雑用が多くて久しぶりに現場が休みの日曜なのに今日も事務処理で出勤。欲張りな下の子は、午前中子供会のクリスマスパーティーがあるのに午後からどっか連れていってほしそうだったが、こんなに寒いんじゃ釣りどころじゃないだろ。
▼たまった見積と緊急の施工図をかいたらお昼を回ってしまった。打ち合わせに行く途中で昼食をとるつもりで会社を出たが、気が変わって進路変更。以前から気になっていたラーメン屋に向かう。通りすぎる時はいつも混雑しているラーメン屋の外壁に、たしか「とんこつ」の文字があったような気がしたからだ。
▼オープンしてもう一年ほどたつと思うが、日曜の昼時のせいか行列ができている。順番待ちの紙に名前を書いてエントランスの貼紙を見まわすと「久留米ラーメン」「細麺」などの単語が見える。かなり期待できそうだ。このあたりにもとんこつラーメンがないではないが、スープはしょうゆとんこつ、麺は中太麺と肝心なところがわかっていない。
▼一口に九州ラーメン、とんこつラーメンと言っても、やはり元祖ともいうべき発祥の味は久留米系だ。この久留米の流れをくむのは、僕的には本場博多より佐賀、小倉だと思っている。鹿児島、宮崎は論外、熊本、大分だって微妙なところだ。食文化というのは極めて地域性が強いもので、そう簡単なものではないのだ。
▼15分ほど待ってカウンターに通されメニューを見る。一番最初に「こってりラーメン」と書いてあるが、一応店員に「これがこの店で一番ふつうのラーメンですか?」ときいてから注文する。こってりも何もとんこつはこってりしているものなのだ。そして本当にラーメンで勝負するつもりなら、それ以外のメニューはいらない。せいぜいライスかおにぎり、あとは大盛とチャーシュー麺があればいいんじゃないか。
▼出てきたラーメンは海苔とチャーシューとメンマ、煮卵に浅葱が刻んである。麺は懐かしい細麺でスープの色合いもいい。見た目合格。味を追求するためにスープと麺だけというのもどうかと思うが、具はなるだけシンプルな方がいい。メンマやきくらげはいらない。水っぽくなるモヤシは厳禁だ。絶対欠かせないものはあとのせの紅ショウガ。スリごまは完全に風味が変わるので×、辛し高菜は邪道だ。
▼レンゲでとりあえず一口スープをすする。もう一口、続けて二口三口…辛すぎずくどすぎず、センスは感じられるものの何かが足りない。その代わり魚介系の臭みがある。もうこの店の味はわかった。あとはトッピングの紅しょうがを入れ、洋ゴショウ(白コショウ)をふりかけてひたすら食べるのみである。
▼いつものようにスープを飲み干してごちそうさま。今一歩及ばなかったが懐かしい味ではあった。帰省前の前哨戦としては十分だろう。しかし大盛でもないのにラーメン一杯650円は高すぎる。ここは東京か?本場ならこのワンランク上の味でワンコイン以下が当たり前だぞ。なお精進するように。
▼帰宅ルートの店だったので、現場に引返すのをよして進行方向の家電量販店に向かう。朝部活に出かける長男と今夜のテレビについて口論になったのを思い出したのだ。僕としては今月の四週連続「坂の上の雲」は家長として当然の権利と思っていたが、長男の言い分では「ここ二週ガマンしたんだから」ということになる。ネイマールもメッシもすごいかもしれないが、バレー部なのにそんなにサッカー見たいかな。
▼昼下がりの家電量販店はごった返していた。日曜ということもあるが年末が近いということもあるだろう。パソコン用のテレビチューナー一万円なり。即決購入。さっそく帰宅してソフトをインストールして試聴。「坂の上の雲」に向かって突き進む今の僕は誰にも止められない。



木曜はおでん、金曜は牛丼にスープ餃子、土曜はすきやき。寒い日が続くので身体があったまるメニューがありがたい。今夜は日本海海戦だ。早めにお風呂に入って気持ちの準備しとかないと。