人生一度きり!

立春を迎え、ようやく寒さが緩んできた。予報では週明けに温かい雨が降った後、また寒さがぶり返すようだ。まだまだ三寒四温ならぬ四寒三温だが、季節は少しずつ歩を進めている。
▼さて、球春と呼ぶにはまだ早いが、先日春の選抜高校野球全国大会の出場校が発表された。21世紀枠で出場が決まった石巻工の話題の影で、山口県早鞆高校の大越監督をとりあげるメディアもあった。大越は仙台育英を準優勝に導いた剛腕ピッチャーだったが、早大を一年で退学して渡米、3Aで修業した後野手としてダイエー入りし、優勝した年に解雇された異色の元プロ野球選手である。
▼彼がその後どこかの大学に編入して教員免許を取得し、早鞆高校で野球部の監督として甲子園をめざしていたことは知らなかったが、早大に何シーズンぶりかの優勝をもたらした奇跡の快投からほどなくして退部し、紆余曲折の末に日本球界に復帰したことは憶えていた。
▼僕らの時代の六大学は法政と明治が強く、早稲田はあまりパッとしなかった。記憶に残る選手といえば小宮山くらいで、桑田は巨人に持っていかれ、大越は久々の大型新人だったはずだ。やはり甲子園優勝投手で今は亡き取手二高の石田投手も早稲田を一年で退学している。退部の理由についてはいじめなどの噂もあるが、僕らより少し下の世代にあたる彼らが、そういった体育会系の伝統から自由になろうとする意志表示をした最初の世代なのかもしれない。
▼江川小林の電撃トレードに匹敵する裏ワザを使って巨人入りし、すっかり悪役になってしまった桑田にしろ、その桑田や清原を擁するPLを破って優勝し、最後は横浜のバッティング投手として短い生涯を終えた前述の石田にしろ、この大越にしろ、けして万人に理解を得られるような生き方ではない。むしろ当時としては世間に後ろ指を指されるような行為だったにちがいない。ただ自分の意志を通したということだけはいえるだろう。
▼しかし僕が言いたいことはそんなことではないのだ。優勝を決めた大越がマウンドでグローブを放り投げた前日、伝統の早慶戦第2戦に僕は彼女と神宮球場にいた。あ〜あ、あともう一日だけ早く大越がリリーフしてくれていればなあ。今頃僕は妻とは別の人といっしょになっていたかもしれない。んなわきゃないね。
▼「旅芸人の記録」で知られるギリシャの映画監督アンゲロプロス氏の訃報を伝えた同じ日の夕刊に、グルジアの映画監督オタール氏のインタビュー記事が載っていた。表現の自由を求めてグルジアからフランスに移った監督は、今度は商業主義の壁に阻まれる。監督は言う。「大勢の人に理解されようと思わないことだ。自分のよき理解者に向かって語りかけるようにしなさい」
▼世間一般の目やお世話になった関係者に気兼ねしてガマンするだけが能じゃない。なぜなら一度きりの人生は自分のものであって彼らのものではないからだ。野武士のように生きた彼らがちょっぴりうらやましい。いや、まだ遅くないぞ。人生いたるところに青山ありだ。それに今はよき理解者だっているじゃないか。
▼アルコール解禁日の土日を僕が楽しみにしているということをよく理解してくれている妻がささっとアテを作ってくれる。

土曜は豚肉と青梗菜の炒め物でベルギービールをゴクリ。メインはベーコンとほうれん草のクリームパスタ。

日曜はサバ塩にニラ餅にチーズハンバーグ。


ゴハンに明太子をのせて最高のウチゴハンでした。