亀の甲より年の功

週末にかけて再び列島を寒波が覆う。確かに風は強く冷たい。しかし陽光はずいぶんと力を取り戻してきたように思う。もう2月も半ばを過ぎた。春の足音が聞こえてきてもおかしくはないね。
▼水曜は現場所長としてきてもらっている同世代の監督とサシノミ。正直ソトノミできるほど家計に余裕はないが、非主流派の僕にとっては貴重な仲間である。大事にしないと。一軒目の焼鳥屋だけでかなり酔った。若いころなら勢いがついて女の子のいる店にいきたくなるところだが、ちっともそんな気にならない。二軒目も居酒屋に寄って飲むだけ飲んであっさり帰った。
▼「ここが終わったらどうしようかな」開口一番彼がこう言ったのには驚いた。ひとつの事業所の通年担当である僕なんかは仕事のあるなしにかかわらず行先を考えることなんてないが、このご時世、監督は必ずしも次の現場があるとは限らない。「技術者にとってはつらい時代だよ」と言いつつも、「大手ならともかく、定年まで現場監督ってのも無理があるわな。若い監督はいくらでもいるし」とも言う。
▼彼のようなたたき上げの人間と話していつも思うのは、考え方がしっかりしている、生き方がちゃっかりしているということだ。考え方も生き方もうっかりしている僕なんかとは正反対の人間と言っていい。性格も短気でうじうじ悩むところがない。まさに韋駄天だ。
▼木曜は代休日だったが途中で呼び出しをくらって丸つぶれ。月曜に本社のエライさんが来るらしく、所内全体が右往左往している。若いころの僕なら、「ありのままを見せないと視察の意味がないだろ」と考えただろうが、お客さんが来る前にうちを掃除しない方がおかしいだろう。年をとると逆に物事をシンプルに考えるようになる。屁理屈をこねてもなんの意味もないと悟るからだ。
▼金曜は午後から会合。よくいっしょに二次会に流れるゼネコンの営業に誘われるも、翌朝が早いのでと断る。若いころならおつきあいした上で寝ずに現場に出たところだが、最近はそんな無茶はしなくなった。体力的にきついということもあるが、そんなことをしても無意味だと悟ったからだ。年をとると自分の体力や能力と相談して折り合いをつけるのがうまくなる。少しさびしいが、それも己の限界を知ってこそできる芸当だ。
▼なんだかバタバタと時間だけが過ぎて落ち着かない。もっとしっかりしないと。考え方くらいしっかりしないと、ただいたずらに年を重ねるだけになってしまう。

木曜はブリ照りに大根の煮物。デザートはシュークリームにメロンヨーグルト。

金曜は会合で人としゃべってるうちに立食の食べ物がすっかりなくなっていたので、うちに帰って妻にパスタを作ってもらった。

若いころなら乾杯の発声と同時に一番に料理をとりにいくところだが、今ではほかの人のそういう態度が不思議に思えてしまう。みんな会社の代表か営業職のはずだけど、お客さんより先に料理をとってきて同業者とばかりしゃべってる。営業はみんなにわからないところでやって、こういう場所では逆に自然体の方がいいのかな。考え過ぎか。

デザートは会合のビンゴの景品の高級菓子。これも若いころなら次に行く店の女の子への手土産を選ぶところだが、もう最近は妻の顔しか思い浮かばない。