わらの犬

今日は久しぶりに五月晴れのいい天気だった。風は爽やかを通り越して冷たいくらい。五月になってもずっとグズグズの天気だって悪く書いたもんだから、お天道様も気にしたんだろう。僕のブログもついに神様がフォローするまでになったか。
▼今朝の日経一面は電機メーカー各社の決算について。日立が最高益、三菱、東芝も好調な半面、ソニーは四期連続の大幅赤字、シャープ、パナソニックも不振の解説は、相も変わらずバカのひとつ覚えみたいに「構造改革のスピードの差」の決まり文句。業績の明暗を分けているのはシロート目にも重電メーカーと家電メーカーの差とわかる。もう日経とるのやめようかな。
▼「半導体やテレビなど変動リスクの高い事業に見切りをつけれるかどうか」と勝手なことを言うが、民需が好調に見える時だって、エコポイントやエコカー減税など国の下支えあってのこと。それがなければインフラ整備やプラント事業、システム開発などが得意な官制企業が強いのは当然。要するに日本には官需しかない。もう日本国民にまともな購買余力なんて残っていないのだ。
▼GWに完了した工事は月曜に片付け、火曜いったん休みで水曜挨拶回り、木曜に完成図書を整理し、本日ようやく検査にこぎつけた。一日くらい休んでも全然疲れがとれない。ある程度まとまった休みをとらなきゃダメだ。最近ずっと体調がすぐれない。よく眠れない。ひどく肩が凝る。
▼今日取引先の総務の人と話していると「〇〇さん亡くなったの知ってる?」と言われて不意をつかれた。GW前のことで、享年62才だったという。Aさんは、競合メーカーの担当者で、数年前に担当する事業所がプロジェクト特需に沸いたとき、僕の会社と彼の会社はことごとく入札の相メンバーになった。そしてその全てをわが社が落札した。
▼うちが根こそぎ仕事をさらった後、一年ほど彼の姿を見なくなった。昨年、事業所の構内で久しぶりに見た彼は、一見して病気とわかるほど痩せ細っていた。立ち話で「ガンで胃をとってね。もう大丈夫なんだけど飯が食えなくて…」と言っていた。
▼僕が全てを意図したわけではないし、僕はそんなことができるようなスーパー社員でもない。結果は会社の方針で、僕は会社の指示通り動いたにすぎないが、やっぱり寝覚めは悪い。
ここ半年ほどまた見なくなったので、その会社の人に「〇〇さんどうしてますか?」ときくと、「さあ、元気なんじゃないですか。もう退職したから詳しいことは…」という話だったが。ここんとこの天候不順は、彼の死を悼む涙雨だったのかもしれない。ここんとこの体調不良は、彼の怨念によるものかもしれない。
▼各界の著名人による回顧録、日経の名物連載「私の履歴書」にスーパードライでアサヒをトップシェアに引き上げた樋口廣太郎氏がこんなことを書いていた。「どんなに優秀で、どんなに会社に貢献した人でも、会社にとって社員の死は大事ではない。だから自分の身は自分で守ってほしい」言いたいことは前段で、だから以下はエクスキューズだろう。
▼僕だって明日は我が身だ。自分の食い扶持が稼げなければ会社にいられなくなる。食い扶持を稼ぎ続けるためには休んでるヒマはない。体を壊すまで働き続けるしかない。もうこんなことはこりごりだ。早くリタイアして余生を送りたいが、Aさんはそれもかなわなかった。今夜はラフロイグハイボール献杯だ。Aさん、申し訳ない。
▼今朝出がけに妻が口に放り込んでくれたケーキは乾燥イチジクと胡桃入り。

妻の手作りのスイーツだけが僕の疲れを癒してくれる薬だ。そして今日の晩ゴハンは絶品の生姜焼きに鮭のムニエル、オクラのオカカ和え。

もう夏も近い。