初夏の日曜日

いつも5時前には目が覚めるので、8時まで二度寝しただけで随分眠れたような気がする。子どもたちは部活、妻はエアロビ。ひとりきりの日曜の午前中が静かに過ぎてゆく。何も慌てることはない。
▼ベランダに面したサッシを開け放し、居間に寝転んでよく晴れた五月の空を眺める。風にそよぐ洗濯物の匂いが胸を満たす。この微風はこの時期ならではのものだ。傷んだ身体に溜った澱のような疲れがゆっくり溶けていくのがわかる。
▼日曜日の午前中ほど気持ちのいい時間はそうはない。めったに休みがない僕にはその有難みがよくわかる。日曜の午前中に予定を入れてはいけない。どこかへ出かけるなら午後からだ。日曜に休むのが当たり前の人たちはそのことを本当には理解していない。だから簡単に町内会や子ども関係の行事を入れて台無しにしてしまう。日曜の午前中に教会に行くクリスチャンなんか、もう一生を棒に振ったようなもんだ。
▼日曜日には平日の代休では代替できない特別な何かがある。ただの休み一日分ではないプラスアルファな何かが。日曜に休めない僕などは、天国はほとんどこのような場所ではないかと錯覚してしまうほどだ。安くできてるね。
▼試合の応援に行ったはずの下の子がお昼にはもう戻ってきた。パパが休みでうちにいると思って走って帰ってきたようだ。早く早くと急かされながら二人で潮干狩のリベンジに向かう。あいにくの潮で水につかった穴場には人っ子ひとりいないが、僕らはバケツいっぱいの大アサリをゲットした。

よくよく観察していると、僕らの穴場は必ずしも万人にとっての穴場というわけではないようだ。時折胴長を着込み道具をそろえた人たちがやってくるが、すぐに諦めてどこかへ行ってしまう。かたや素っ裸に素手の僕たち親子は難なく黒ダイヤを掘り当てる。
▼帰途、車の中でゴキゲンの下の子が野球の試合の応援テーマ曲をずっと歌っている。さくらんぼ、パラダイス銀河アルプス一万尺…僕も負けじとコンバットマーチと紺碧の空で対抗する。ああノーテンキな親子だ。
▼アサリは一晩寝かせて明日のお楽しみ。今日のウチゴハンはオクラ、納豆、山芋の千切が入った冷しそばにガーリックトーストサラダ。

そして昨日はミートローフにトマトとキュウリの夏野菜サラダ。

もうすっかり夏だね。そういえばツバメも飛んでいたな。
▼バレーの試合から帰宅した長男が「また24対23の時にピンサーやらされた。二日連続や」とぼやいている。妻によると中学の頃がらあと1点でゲームが決まるような場面でのピンチサーブは決まってうちの子だという。サーブがうまいからじゃない。心臓に毛が生えているからだ。さすが先生、生徒のことがよくわかってらっしゃる。