幸福の王子③

今日は免停の講習日。人身事故とスピード違反の合計が6点を超えてしまったのだ。まあ今日一日いい骨休めになったと思うことにしよう。ブログの更新頻度が上がってきたのも仕事が一段落した証拠だね。
▼スピード違反は交通量の少ない見通しのよい抜け道の死角でネズミ取りに引っ掛かった。正直事故多発地帯でもなければ、取締によるスピード抑制効果が必要な場所とも思えない。それが証拠に警察は十数人を動員して三台の机を並べ、通る車を軒並み引きずりこんでいた。つまりここを通過する車は例外なくスピードオーバーしており、制限時速の方に無理があるのだ。捕まる捕まらないの分かれ目は、スピード違反かどうかではなく、三台の机と警察官が捌ききれるかどうかによる。
▼時間があれば徹底的にゴネてやるところだが、客先と約束があって泣く泣くハンコを押した僕は、目の前の警官に言ってやった。「イチニサンシ…ジュウニジュウサン…大のおとなが大勢でこんなことしてて恥ずかしくないの?ホントあんたらヒマだね」警官もわかっているのかひたすら低姿勢で誰ひとり僕と目を合わそうとしない。民間人が汗水たらして稼いだお金で給料もらっておいてまだ足らないのかな。全く「盗人に追い銭」とはこのことだ。こんなとこで油売ってるヒマがあったら交代で東北行けばいいのに。
▼人身事故の方は、交差点で直接ぶつけた車の人がなんともなかったのに、その前にいて玉突きでちょっと触れただけの車の人が、その場の現場検証ではなく後になって人身に切り替えた。その女性は市の介護職員だったが、職場の同僚、家族、診断書を書いた医師を含めていろんな人から知恵をつけられたのだろう。彼女が乗っていた車が公用車でよかった。まあどっちにしろ保険対応だけど。
▼スリップの原因となった雨が降りやまぬ中、晩方菓子折を持って女性のお宅を訪ねた。その際に僕は玄関先に、さしていったかなり高価な妻の傘を置いてきてしまったのだが、それきり向こうから何の連絡もない。取りに行くのも嫌なのでそのままにしているが、おそらく使っているのだろう。お宅を訪ねた時彼女は洗い物をしていた。大きな納屋のある兼業農家らしき古い家の玄関横の居間では、初老の男がステテコ姿でソファに胡坐をかいてテレビを見ていた。
▼このように後から人身事故に切り替えるような人たちの例を見聞きするにつけ、世の中には不幸な人がたくさんいるんだなと暗澹たる気持ちになる。こういう人たちとは同じ日本人であってもまるきり人種が違うのだと思ってしまう。だって僕なら自力で歩けないほどならともかく、そうでなければ多少痛いとこがあっても人身にしようなんて思わないからだ。連絡先をきかれても、「忙しいから来なくていいです」と教えないだろう。実際に忙しいこともあるが、一番には僕が幸福だからだ。
▼お昼は講習会場の対面にある本格中華料理店で妻とランチ。僕らはなんでもデートイベントにしてしまうのだ。妻はホタテとセロリの炒め物。

僕は蟹玉。

メニューにも「蟹」と漢字で書いてあった。その方が高級な感じがする。そんな店だ。
▼夜は昨日のアサリを使った待望のボンゴレロッソ。

妻がアサリを洗いながら「ひとり死んでる」とつぶやいた。その他大勢ではなく、ひとりひとりに顔があるほどの大粒のアサリである。これを幸福と言わずして何が幸福か。もちろん子どもたちも大喜びである。三人の王子たちに囲まれて、妻も女冥利につきるってもんだ。