表徴の帝国

僕に続くこと二日遅れで気象庁が梅雨明けを発表した。雲は確かに多いが、梅雨の空でないことは一目でわかる。昨今の天気予報の精度はピンポイントに時間単位で当たるほどに向上したが、マクロの判断は常にワンテンポ遅れるような気がする。大丈夫かな。
▼世間的に今一番の話題は大津中2いじめ自殺問題だろうか。尊敬する人気ブロガー女史の顰に倣い、僕もこの件について何かコメントできることは少ない。いじめについての本当に切実な感想とは、個人的な体験か、もしくは子供を心配する親の立場からのものしかないからだ。それ以外の全てのものは、無責任な他人事の感想にならざるをえない。
▼隠蔽体質、組織防衛、自己保身…教育委員会や学校側の会見を見るにつけ、大人の世界が一筋縄ではいかないいろんな事情を抱えていることはよくわかる。そして子供の世界もまた、大人社会と全く同じ複雑な力関係の磁場が支配するひとつの社会なのだ。自殺はそのパワーバランスの歪みの現れでしかない。
▼それにしても警察が被害届を受理しなかったとか、この期に及んで校長がいじめの把握を否認したりとか、被害者の親が有力者で「うちの子に何かあったらどうしてくれるんだ!」と一喝したとか、もうほとんどマンガの世界である。奇しくも「GTO」がリメイク放映中だが、鬼塚やごくせんのヤンクミやルーキーズの川藤だけはマンガの中の主人公で、実際にそんな先生はいない。そんな劇画チックな先生でなくても十分に尊敬に値する先生はいるはずなのにね。
▼さて、三連休最終日は反原発最大のデモが行われた。毎週金曜の定例デモもツイッタ―や交流サイトを使った新しい呼びかけの形で広がりを見せているという。反原発デモについてはいろいろな批判もある。よく聞かれるのは「再稼働反対って言うけど稼働してもしなくても原発がそこにあるリスクは同じだろ」というもの。「原発反対派が電気料金値上げに反対するのは自己矛盾だ」という指摘もある。
▼デモ参加者は大飯原発再稼働だけを反対しているわけではない。反原発だけでもない気がするが。一方デモを批判する人は、短期的やら長期的やらいろんな前置きやエクスキューズにかかわらず、原発容認派であることに変わりはない。理屈は後からついてくる。議論はためにするものであって、互いが理解しあうことはない。これは代理戦争なのだ。
▼デモという形が有効かどうか僕にはわからない。ただ別れ道を前にいつまで議論しても時間のムダだとは思う。科学的な論拠も正しい判断もない。どちらに進むか早く決断して一歩を踏み出すしかないではないか。そしていずれの道を進むにせよ、いいことばかりじゃないことだけは確かだ。何かものを言う人は、そのことに自覚的であればそれでいいと思う。
▼そろそろ現実世界に戻らないと永遠に表徴の帝国の住人になっちまうな。

海の日のウチゴハンはまずカリカリバンズ。

そしてメインは豚丼夏野菜PLUSにハムサラダ。
今日は取引先の人のアメリカ出張土産のビーフジャーキーをあてにビールを飲み過ぎて早々にダウン。夜中に目が覚めて今これを書いてるってわけだ。
▼「表徴の帝国」といえばフランスの思想家ロラン・バルトの有名な日本論である。僕のブログの使い方が適正かどうか、あるいは学生の頃懸命に読んだバルトを理解できていたかどうかはともかく、僕が今思い出すのはバルトの著作を多く訳した沢崎浩平先生のフランス語の授業である。都立大から来られていた先生は、僕の日本語訳を褒めてくださった。温厚で実直そうな人だったが、翌年亡くなられたときいた。バイト先の喫茶店でたまたまいっしょだった学部生とひとしきり興奮して話した記憶がある。ネットで検索してみると、ご夫人の葬儀の打ち合わせ中に倒れてそのまま亡くなったと書かれている。よっぽど悲しかったんだろう。