ホームスイートホーム

今日は曇り空の比較的過ごしやすい天気となったが、昨日までの猛暑日が基本あと二ヶ月続くと思うと死ぬな。いや、死ぬね。
▼水曜はあまりの暑さに17時きっかりに焼鳥屋に直行。東北出張から戻ってきたばかりの同僚と生ビールを爆飲。あちらはパチンコ屋とコンビニのゴールドラッシュらしい。保険金、弔慰金、義援金、復興予算…金だけはうなるほどあるのにやることがないからみんなパチンコに行く。あるいは仕事を求めて他県からやってきた労働者が毎朝コンビニに群がり休みにはパチンコ台に向かう。
▼六百万人の建設労働者は、こう言ってよければ棄民である。僕が今の会社に入って十年ほどの間に、公共事業は見事にゼロになった。今春高速道路の新ルートが開通すると同時に、長く当社で下請をしていた北海道の出稼ぎグループが福島に移動した。原発構内の作業でこそないものの、かなり線量が高い地域での仕事だという。
▼続けて半日しか働けないような危険な場所での仕事なのに、決断に時間をかけなかった。ここにいても仕事がないのだから選択の余地はない。長い出稼ぎ生活の中で仕事が切れたことはこれまでも何度もあっただろう。けど今度ばかりは待ってもムダだと、それこそ長年の感覚でわかるのだろう。そして、おそらくは次の場所が終の棲み処となる人もいる。
▼仮に行先が福島じゃなくても、四十代半ばで東北の復興事業に関わろうとするなら、骨を埋める覚悟がいる。ただでさえ仕事がないのに、途中で戻ってきてももう居場所はない。復興にかかる時間と、自分の残り時間を考えれば、そこでキャリアを終えることになるのは間違いない。東北までの距離を考えれば、東北の住人になることとイコールだ。
▼いずれにしろ、今土建屋の仕事が満足にあるのは東北くらいのものだ。かつて男たちが出稼ぎに出ざるをえなかった地域に、今度は全国から仕事のない男たちが逆流している。不足している労働力を東北に振り向けるために、他の地域の仕事をわざと絞っているのではないかと勘繰りたくなるほど仕事がない。
▼家を建てたばかりの土木プロパーの同僚は、仕事のない住み慣れた土地に残るか、仕事とパチンコとコンビニ以外に何もない東北の復興に携るか、「生まれてこの方こんなに悩んだことはないほど毎日考えている」。僕なんかは、仕事がなくて東北を離れた人たちが、これを機会に故郷に帰って故郷のために無理のないペースで働くのが一番いいと思う。
▼こんなことを言うと怒られるかもしれないが、国はその地域の住民が満足に生活するに足るだけの最低限の仕事すらなかった場所、つまりは元々たいしたものもなかった場所に、そんなに急いでいったいどんな王国を建設しようというのだろう。そんなことをしても亡くなった人もなくしたものも戻ってきはしない。それと入れ替わりに大都市圏以外の全ての地方が東北化しているのに。
▼それともこれは、グローバル化やフラット化、コモデティ化による中産階級の凋落という、全く別の問題なのだろうか。前にも書いたように、生きていくためには、そこがたとえ外国であろうと需要のあるところについていくしかない。けど好んでドラスチックな変化を望む人はそんなに多くはない。
▼環境の激変を伴わずに現状の生活水準をキープするには、有体に言ってずるがしこく立ち回るしかない。大津いじめ自殺事件に限らず、今の教育現場に蔓延する見苦しいまでの隠蔽体質や事なかれ主義の本質もそこにある。もっと言えば、今の日本のほぼ全ての成人男子に共通する行動規範は「自己保身」である。誰もが転落の淵に立ち、背に腹は代えられないのだ。
▼ああ、空模様に引きずられて湿っぽい話になっちまったな。まあ僕もよく考えもせずに職を変えたりあちこち移り住んでるんだから、そんな大げさな話でもないかもしれないね。

火曜はバンバンジーとチンジャオロースの中華二本立て。

水曜お休みの後の木曜はソーセージサラダにケンタロウレシピのツナマヨパスタ。ツナマヨがあまり好きじゃない僕も大満足の奥の深い味だった。そして今日は照焼チキンサラダに簡易豚しゃぶ。

どこで生きていくにしろ、家族といっしょなら悪くない人生だ。出稼ぎで一番つらいのは、家族と離れて暮らさねばならないこと。東北で一番悲しいのは、家族を突然奪われたこと。