仮託の人

寒気がようやく緩んだと思ったら週末から週初にかけて雨模様の天気である。こうしてみると暑くも寒くもなく穏やかな好天というのはそうそうあるものではない。五月晴れの数日と秋晴れの数日、今時分なら幾日かの小春日和。それ以外のほとんどは酷暑か厳寒か強風か雨降りだ。空調のきいた室内にいるとそのそのことを忘れがちだし、穏やかな陽気の本当の有難みもわからない。
▼今日はここんとこの厳しい冷え込みが嘘のようにポカポカ陽気の日曜となった。僕の冬場のトレードマーク、穴だらけのフリースも着ずにすんだ。まるで神様がここが日本の分水嶺だから選挙に行きなさいと国民の背中を押してるみたいだね。例によって仕事を終えると一目散に帰宅して妻と小学校の体育館へ。越してきて以来選挙という選挙は毎回同じ記憶なんだから僕もよっぽど働いてるね。
▼選挙も近代戦争と同じ総力戦。大方の趨勢を挽回するのは至難の業だ。風向き(国力)が劣勢なら、誰に何と言われようと戦いを避けるのが得策である。党首討論の第一Rでいきなり真珠湾攻撃なみの奇襲「あさって解散」の先制パンチで安倍ちゃんからダウンを奪った野田クンも、その後は旧日本軍と同じく慢心して大振りのパンチが目立ったね。トドメは「総理になってわかったことがあります…」のCM。あれはまずかった。稔るほど頭を垂れる稲穂かな。リーダーが自画自賛してどうする。民主党はこのタイプが多いな。
▼今回の選挙の争点は、野田クンがいくらごまかしても民主党政権三年間の通信簿にならざるをえない。国政に練習も試運転もない。失敗すれば二度目はないのだ。僕の予想はざっと自民300、民主、維新、みんな各50、公明、みらい各20、その他もろもろで10というところだがどうだろう。日付が変わる頃には大勢が判明する。と書いてるうちに開票と同時に大勢が判明しちゃったよ。
▼さて、今度の選挙に名前をつけるとすれば何だろう。限りなく「やぶれかぶれ解散」に近い「解散決断力」もとい「決断力解散」か。鳩山、菅、野田でスリーアウトチェンジの民主党は惨敗必至だが、強気の野田クンの敗戦の弁をきいてみたい。就任時から消費税を上げて民意を問うと公言してきたのだから、負ければ凍結されても文句はないだろう。それとも「変な声」とでも言うのだろうか。
▼それにしても夜更かしして開票速報を見るなんて四十代になってからのことだ。僕も大人になったってことだね。何かにかこつけて誰かに肩入れし勝ち負けを競う。そんなことに熱中できるのは成人男子だけである。それが証拠に女子供は選挙なんててんで興味がない。彼らは自分に直截関係あることとないことくらいわかるからだ。選挙とは何か。ある種の代理戦争である。平和な時代の男子には定期的にガス抜きが必要なのだ。

土曜はミートドリアに豆腐サラダ。


選挙から帰るとまず胡桃とチーズのパンでビールをやり、メインは豆腐、厚揚げ、ガンモが入った豆腐系鍋。冬は豆腐の季節だ。豆腐工場で働いていた頃を懐かしく思い出す。豆腐屋も活気づいていることだろう。関係あるっちゃあるかもしれないが、豆腐の売上げには政治的要因より季節要因の方が大きいだろうし、世の中のたいていのことはそうだ。