男たちの旅路

ここ数日は陽がさすと汗ばむほどの陽気だったが明日はまた寒くなる。週末の雨の後クリスマス寒波がやってきて、そのまま厳寒の年末年始になりそうだ。真冬らしくていいね。
▼今年も残すところ十日あまり。暮れの帰省に向けてカウントダウンが始まった。越してきて十年。上の子が高校に上がる前までは、冬休みが始まると同時に妻と子供たちだけ先に帰省してイブにはもう独身だった。みんなが早々に引き上げたガランとした事務所で、仕事の手を休めひとり紅茶をわかし食べるクリスマスケーキのうまいのなんの。「オマエ気ままでいいなあ」と社長がうらやましそうにしていたね。その社長も数年前に奥さんを亡くし、今は自由を謳歌している。
▼僕の場合は謳歌というより満喫かな。年に一度原点に帰る感じが楽しかった。それも結婚できたからこそ味わえる余裕の産物だろう。もちろん妻のことは大好きだからいっしょにいればもっと楽しい。去年は妻と下の子が先に帰り、上の子と二人晦日の新幹線に乗った。ずっと立ちっぱなしだったけど楽しかったな。下の子が中学の野球部に入った今年はついに妻だけ先で後からバカ三人いっしょに帰ることになった。それもまた楽しそうだ。
▼親に庇護されるだけの存在だった二人もいつのまにか成長した。僕たち夫婦の意識が追いつかないほどだ。下の子などは永遠に小学生のような気がしていたが。それは彼がいつまでも子供らしいということもあるが、彼が六年間まるまる同じ小学校に通ったということもあると思う。ひとところにこれだけ長いと、もう主のようなものだ。ミスター小学生である。転校して三つの小学校に通った僕なんかその都度卒業でもしたような気になって可愛げのないマセガキだったもんな。今は子供だけど。
▼もう今年も終わろうかという今でも、妻は何か下の子の件で学校に連絡する際、迷わず小学校に電話してしまうという。先日も緊急の用件で慌てて「1年5組の〇○の母ですが」とかけると、怪訝そうに「一年は四組しかありませんが」という答えが返ってきて一瞬めまいがしたそうである。そして今でも小学生が集団下校しているのを見ると反射的に「〇〇ちゃん(下の子)が帰ってくる。急がなきゃ」と焦るらしい。
▼あまり勉強が得意ではない下の子が通信簿を見せたがらないことは前にも書いた。先日はテストでめずらしく手応えがあった上に、先に返ってきた教科の点がよかったようで、その時点で欲が出て「(五教科)全部で〇〇点だったらiphone買ってよ(妻と長男がiphone、下だけガラケー)」と騒いでいたが、結局いつもと同じくらいに落ち着いたのか何も言わなくなってしまった。僕も追及はしない。毎朝眠そうに宿題はしている。成績が悪くてもその方が大事だ。僕は成績はよかったけど宿題はしなかった。世の中ナメてるとこのざまだ。
▼上の子も下の子もうちに帰ってくると部活の様子をいつまでもベラベラ喋っている。たいして興味もないので生返事して聞き流している。ひと通り話すと気がすむのか、テレビを見たりゲームをしたりしてそのうち眠ってしまう。こういう態度がいいのか悪いのかはわからないが、僕も彼女にフラれた時は弟をつかまえちゃいつまでも繰り言を言ったもんだ。弟が聞いてようがいまいがお構いなしだった。犬猫でもよかったんじゃないかな。実際弟も聞いちゃいなかった。僕がしゃべり疲れて少し休むとおそるおそる「終わった?」と聞いたもんだ。

月曜は大根の煮付にカキフライに中華スープ。

火曜は妻が得意のチョコチップ入りクッキーを焼いてくれた。近所の奥さんや友人知人からリクエストがくるほどのうまさなのだ。彼らも長い遍歴の末、ママのような女性と巡り合えたらいいね。