心地よいリズム

今日は朝から雨模様の天気だ。昼前には本降りになった。いや、土砂降りに近い。今年はそうでもないが、本来この時期は雨の多い季節である。二十四節気でいえば穀雨。仕事をしていると雨は迷惑なだけだが、農家の人には欠かせない恵みの雨だ。世の中にはいろんな仕事があり、いろんな人がいる。自分だけが人間じゃない。
▼年度が替わり、年度末に溜った懸案事項の処理がようやく終わり、先週末からほぼ定時で帰れるようになった。GW連休工事までの束の間休息の日々だ。早く帰るとどうしても早く眠ることになるが、10時に寝れば4時、9時に寝れば3時という具合にきっかり6時間で目が覚めてしまう。昏々と眠り続ける妻と子供たちがうらやましい。年齢のこともあるが、基本的に心配事がないのだろう。
▼ここのところ出費が嵩み、気兼ねなく趣味にお金をかけられない。まあ僕の趣味なんて気兼ねなくかけても知れてるが。月イチの休みに映画を観て本屋に寄る程度。時折ムシャクシャして帰りに中古CDショップに寄ったり、家飲みのシングルモルトを衝動買するくらいだ。タバコは吸わない。パチンコもやらない。自分でも安くできていると思う。
▼早く帰って早く寝て早く目覚めた時は、マイフェイバリットのビルエバンス「ワルツフォーデビー」を聴きながら本を読む。特にマイロマンス、サムアザータイム、ポーギーがいい。でもやっぱりワルツフォーデビーが一番いい。上京してジャズを聴くようになった弟も、この曲ばかり聴いていた。僕なんかよりずっと優しい心の持ち主だ。
▼そうやって、川上弘美さんの「なめらかで熱くて甘苦しくて」を読んだ。川上さんは「神様」以来のファンだが、これは「蛇を踏む」の系列かな。でもそれをいうならクマを擬人化した「神様」だって同じだ。でも「神様」は好きだけど「蛇」はそうでもない。それでこの連作はどちらかといえば好きな方に入るから人間の感覚は不思議だ。
▼要するに川上ワールドなのだが、普通の人の僕にはタイトルモチーフである最後のmundusはよくわからなかった。五つの短編のうち、特にterraがよかった。ignisもよかった。aerは妊娠出産前後の女性の精神状態に頷ける部分が多すぎて、逆によくなかった。あまりわかりやすくてもいけないのが難しいところだ。
▼この連作は、女性の性を年代順に表現しているようあり、そうはいっても一人一人はある程度長いスパンで描かれているので、いろんなタイプの女性を書いているようにも見える。それでいてみな似たような感じの女性だ。だからといって女性がみなこんな風かというと、それも違う気がする。
▼ここで描かれている女性は、おとなしく、つつましやかで、ひっそりと片隅で生きている感じだが、芯は強そうだ。それが女性というものなのかもしれない。男性と違って出世欲や名誉欲、権力欲などくだらないものに興味がない分、自分の身体の欲求に従って生きる性なのかもしれない。
▼それにしても僕もずいぶん大人になったもんだ。若いころはこの手の内容の本は、「彼女がこれを読んだらどう思うだろう」という視点以外の読み方はできなかった。それを思えばこんなつまらない感想でもたいした進歩だ。
▼夕方うちでぼんやり各局ローカルを眺めていると、ボランティア仲間(僕はしてない)の年下の友人から電話があった。山奥のフリースクールで教員をしている彼は、数か月に一度思い出したように電話をくれる。少子化の影響で彼の職業もきれいごとばかり言ってられないようだ。
▼ストレスフルな社会で誰にも何も言われずにすむには、「組織のトップになるしかないね」と僕が言うと、「いや、面と向かって言われなくても陰で言われるからどっちもどっち」と彼。なるほど、そうかも。人間が社会的動物である以上、どんな立場でもストレスゼロとはいかない。最後は「とにかく家族だけはオアシス」との意見で一致した。
▼そのオアシスであるはずの妻が今日は頗る機嫌が悪く写真なし。

昨日は焼きギョウザに新タマにアボガドディップ。