あなたならどうする?

日曜は朝まで本降りだったのがウソのような青空になった。晴れるとまた特に暑い。この土日は工程がタイトな工事でたいへんだった。オマケに土曜は接待があってヘロヘロである。
▼僕の仕事は土日が一番忙しいが、接待はお客さまが翌日お休みの金か土の夜になる。どっかで聞いたことある話だと思ったら、熟女クラブの母子のホステスと同じだ。昼間の仕事はサービス業のかきいれ時である土日フルは絶対条件。夜のバイトは飲み屋のかきいれ時である金、土の夜しかない。ゆえに人が遊んだり休んでる金土日は寝ずに働かなければならないが、均せば一週間分の賃金にもならない。学校の耐震工事でよりによって一番暑い時期だけ忙しく、あとはヒマなハツリ屋に似ている。
▼よく日経なんかで「医療、介護、サービスなど、今後成長が見込まれる分野の規制緩和が不可欠」なんて決まり文句を見かけるが、少なくとも実際の労働実態でいえば、サービス業は土日が休みの大企業組合員や公務員など労働貴族の奴隷である。極端に変則的なシフトで働かされ、身分の保障はない。介護もほぼ同様。医療だって報酬はともかく労働環境でいえば、歯医者など一部の個人医院を除いて似たようなものだろう。
リーマンショック後の派遣切りが社会問題化し、国会で派遣業を規制する法案が審議された際「自由な働き方の選択の幅を狭める」と業界から反対の声があがったが、自由化の恩恵を受けるのは常に使用者の側だけである。自由主義者(市場万能主義者)に聞いてみたいのだが、先ほど例にあげたような働き方にどんな自由があるのか。同様の意味で「昨日より今日、今日より明日の方が世の中は必ずよくなる」とおっしゃる人気社会派ブロガー女史の歴史観にも賛成できない。僕はスマホやコンビニがなかった頃が不自由だなんて感じたことは一度もないし、今これらのもののおかげで人間がより自由になったとは思わない。
▼先週末妻とのデートの時に見かけた「社会保険環境研究所」というご立派な建物には驚かされた。ご丁寧に副題に「年金積立金還付事業」と書いてある。このクソ暑い陽気にも冷房がギンギンに効いてそうな総ガラス張りの建物だ。いかにして額に汗せず楽して生きるかを研究するにはお誂え向きの環境である。ここで働いている人たちはいったいどういう立場の人だろう。厚労省の外郭団体の公務員か準公務員という扱いか。このように十重二十重に保護された人たちがいる一方で、政治家が「自己責任」とか「がんばった人が報われる社会」とか言っても、もう笑うしかないね。
▼話しが大きく逸れた。土曜の接待である。公務員でないとはいえ、こういうことは相手の立場もあるので慎重の上にも慎重を期さねばならない。一次会で個室をとり、二次会までタクシーで移動したまではよかったが、二次会の会場の選択をまちがえた。無造作に会社でよく使うハコの大きな店に行ったら、お相手の会社の集団と鉢合わせしてしまった。とんだ失態である。幸い僕が顔を知っている人はいなかった。と思いたい。というのは恐くてそちらのテーブルを見ることができなかったからである。「どうしましょう」ときくと、彼は「大丈夫、みんな僕が遊んでるの知ってるから」と言うものの動揺は隠せない。逃げるように店を後にしてそのまま解散した。
▼そこでこんな時に咄嗟にどう行動するのがベストなのか、広く読者に意見を募りたい。①知らん顔する②挨拶はする③お店で偶然会ったふりをする④いっしょに飲んじゃう(彼らの分も払う)④→③→②→①の順に決まってるのだが、実際には思考がフリーズしてしまい①だった。手持ち資金の量、カードの有無なども行動に影響を与える。なんといっても先立つものはカネだ。人の器量はいざという時に現れる。やっぱり僕に営業は無理かな。
▼そんなこんなで金土日は無茶苦茶ハードワークだったのに心配でほとんど眠れなかった。働き方も下流なら、器も下流に相応しい小ささである。社長業なんて毎日こんなことの繰り返しだ。社長の口癖に「気を遣えないやつは頭を使え。頭を使えないやつは体を使え」というのがある。人間ステージが上がるほど気と金を使う場面が多くなるものだ。僕にはおとなしくうちで妻の手料理をアテに第三のビール飲んでるのがお似合いかもしれない。

金曜はタラコスパゲッティ。

日曜は焼き餃子にマーボ豆腐。