子供の中の子供

連日の猛暑である。予報では最高33度くらいなのに、昼にはあっさり35度を突破して軽々と36、7度に達する。昨日今日の現場は10時、15時にかかわらず自由に休憩していいようにしたが、水筒を持参していない作業員は、休むたびにペットボトルを買うので、すぐに5本にも6本にもなる。確かに一時間動けば500ミリくらいは簡単に出ていくだろう。熱中症にもなるってもんだ。
▼やっぱり気候がどうかしちゃってるのかもしれない。僕が子供の頃クーラーのあるうちはめずらしかったが、今はクーラーのない家の方がめずらしいだろう。極端な話、日本中の建物でクーラーが使用されているのだ。日本中の建物の室外機から熱風が放出されているのである。ヒートアイランドにならないわけがない。そしてひとたび外気温が常軌を逸脱し始めたら、それから逃れるにはもうクーラーのある部屋に逃げこむしかないのである。人類は早晩滅びるね。科学的も根拠もない。直観的にそう思う。
▼こんな日はビールに限るが、金麦のCMはいまだに檀れいが継続出演中だ。長い。僕がこのことを指摘してからもう二年たつ。金麦はどこのスーパーでも同ランクの商品より割高である。それだけ売れているのだ。第三のビールのジャンルでいえば独り勝ちと言っていい。これだけ新製品が出ている中で、金麦自体記録的なロングセラーだが、それもこれもひとえに檀れいのおかげである。
▼CMキャラクターは、その商品を買う層にだけピンポイントで直接訴えるものでなければならない。関係ない人には全く関係ないからだ。例えばライバル他社の商品に起用されている女性タレントたちも、檀れいに負けず劣らず国民的人気を博している大スターばかりである。しかし第三のビールを買う人たちが憧れるのは、檀れいがひとりで自分だけを待ってくれている隠れ家的な場所なのだ。第三のビールの購買層はそれくらい疲れている。
▼さて、今日は下の子の誕生日である。下の子は、勉強を一生懸命して「できたできた」と喜んでいたテストが返ってきてみると、半分も取れてなくて自分で首を傾げるような子である。上の子が下の子が勉強している様子を見て、「それくらい勉強すればオレなら一番や」といい、返ってきた点を見て、「オレ、なんも勉強しなくてもこんな点取れん」という感じである。
▼今日は下の子の誕生日なので、妻がどうしても食べたいということで餃子を食べに行った。疑問点はスルーしてください。そこでの子どもたちの会話である。上「社会今どこ習ってる?」下「産業とか」上「選挙は?」下「生徒会?」上「?…衆議院とか参議院とか」下「習ってない。あと人口とか。少子高齢化社会、一人っ子政策」上「ああ」下「中国ホントはもっといるってよ。村の奥の方とかに。先生言ってたもん」上「そんなんどうだっていいやん。それよりおまえ9点て大丈夫か?」下「大丈夫。先生に気に入られてるから3もらえるもん」
▼とまあこんな感じである。実際家の長男にとって先生の余談なんかどうでもいいが、下の子は中国のどこかの村に人がいっぱい隠れているのが気にになってしょうがないのである。先生は点が取れなくても自分の話を真剣に聴いてくれる下の子がかわいいだろう。下の子にとって選挙はまだ生徒会のことである。中学の社会で習う公民分野なんて、僕だって塾の先生になって子供らに教える時覚えたようなもんだ。三権分立なんてわかれという方が無理だ。
▼さらに妻も加えて理科の解剖がフナだカエルだと話していたら、「ブタだよ」と言い出した。「教室が臭くてたいへんだ。大騒ぎになる」と真剣に訴える。きっと野球部の先輩か誰かに吹き込まれたのだろう。するともう教室にブタがいるところを想像して、そちらの方が現実感が強くなってしまうのである。
▼誕生日に絡む下の子の口癖は、「今まであっという間だった?」である。「あっという間だよ」と答えると、しきりに何か考えている。とにかく素直で子供らしい。想像力がたくましく、極端にやさしい。上の子はそんな感慨とは無縁だ。現実的というかなんというか、感傷的なところがひとつもない。それでもやさしいところは下と同じである。
▼子供にとって一番大事なことは、とにかく褒めることらしい。自分を認めてもらえることが、子供にとってなによりうれしいのだ。それが健全な自尊感情を育て、ひいては他者を尊重する心を育てる。褒めるというのは、照れくさくて案外難しい。振り返ると親としてちゃんと褒めてやれたかどうか心もとないが、よく育ってくれたと思う。

月曜は肉じゃがに鶏とゴボウのサラダ。


そして誕生日の夕食会にケーキ。