いつも二人で

ついこの間までTシャツ短パンだったのが一気に冷え込んで、ようやく秋らしくなってきた。Kスタ宮城日本シリーズは、アナウンサーが毎回「どんどん気温が下がっています」と連呼していたのが印象的だった。よっぽど寒かったんだろう。
▼さて、日曜日は毎年恒例のジャズフェスの日だった。昨年は紆余曲折の末結局行けなかったので、今年はなんとしても妻と二人でゆっくり楽しもうと満を持していたのだが、台風のおかげで仕事がずれ込んで出勤するハメに。
▼朝の段取だけで帰るはずがお昼に。うちに帰って着替えて出かけるともう2時過ぎ。三部構成の一部が終わり二部の途中からの入場だ。ホントにこんな仕事早くやめてしまいたい。長男が大学、次男が高校を出るまであと四年の辛抱だ。
▼今年の目玉は綾戸智絵。客席は大入満員である。一昨年は小曾根真だったが、ここまでの入りではなかった。妻によると去年の大西順子もそうだったらしい。今年は前から9列目という好位置だったが、そこから見える景色はほとんど白髪とハゲ頭。後ろの席も推して知るべし。その満員の中高年が沸きに沸いている。
▼綾戸はもうジャズライブというより漫談だな。自分で言ってたけど綾小路きみまろだ。話術は一級。歌もピアノもうまい。しかしそれが話術ほどではないことが、最後に第一部に出ていたジュニア・マンスが再登場して綾戸の歌の伴奏をする時にわかる。やっと歩いているような演奏なのに艶がある。ああ、第一部から聴きたかった。
▼トリは熱帯JAZZ楽団。今、日本のジャズバンドで、どこのCDショップでも並んでいるのはこの「熱帯〜」と「渋さ知らズ」くらいだろう。結成から18年。メンバーはちょうど僕と同じくらいの年齢である。彼らが輝いて、なぜ僕が輝けないか、その理由を僕はずっと考えてきた。それは好きなことをやってきた人だけが持つ自負である。その矜持だけが人を資本と経済の論理から自由にするパスポートなのだ。
▼イントロのオリジナル曲と「マイフェイバリットシングス」を挟んだ三曲目の「アイブガッタザワールドオナストリング」が良かった。歌い終わったバンマスがMCで歌詞を解説する。「僕は世界を操っているのさ。虹の橋に座って…」あれ?おかしいな。そんな歌だったかな?やっぱり英語ができないとダメだな。なぜなら僕はこの歌を聴いている間中ずっと、妻との結婚前のデートのことを思い浮かべていたからだ。
▼地元で唯一残るデパートのテラスで妻と話をした。二人ともピアノを習っていたこと。ブルグミュラーからソナチネ、そして僕が辿り着かなかったソナタの話。「あなたとこんな話ができるとは思わなかったな」と妻が言った。ほとんど初めてのデートだったのに、もうこの娘と結婚するのが自然なことだという気がしてたっけ。
▼「…なんだってできるさ。だって僕は恋をしてるんだもの」やっぱり恋の歌だ。妻の手を取る。実際に踊ったことはないけれど、妻とダンスをする場面を夢想する。現実のライブはラストが近づくにつれ、どんどんダンスナンバーになっていく。「セプテンバー」に至って、ついに客席のボルテージは最高潮に達した。僕も立ち上がって踊る。でも僕が踊りたいのはこれじゃない。心の底からウキウキするような、ミュージカルダンスだ。
▼うちに帰って妻とライブの感想を話していると「手拍子のリズムがおかしかったよ」と言われた。「ああ、あれはツースリーと言って…」と自分で言いかけてハタと気がついた。そういやスリーツーになってたな。僕も相変わらずだ。けど「処女航海」の彼女ならともかく相手が妻なら気にする必要はない。妻の前で自分を飾る必要はない。最初からそうだった。ただ二人で楽しむことだけを考えていればいい。それは最初から、そして今でもずっと変わらない。

金曜は春雨の炒め物、トマトとモッツァレラのスライスサラダ、イワシの混ぜゴハン

土曜はロコモコ丼にひじきサラダ。

日曜はチキン南蛮丼に野菜スープ。そして月曜ヨガカレーのデザートはクリスピークリームドーナッツ。