子供の言い分

日曜激しい雨が降った後は春爛漫の陽気である。心配した桜も散らず、見事に満開の枝を広げている。新しい年度の始まりに相応しいお天気だ。
▼下の子は長い春休みの間もずっと練習だが、年度替わりの今日はお休み。昨晩はお友だちのうちにお泊りした。今はまだ赤ちゃんに毛が生えた程度の下の子も、これから高校を出るまでの4年の間に自然に乳離れしていくだろう。上の子も大学に進学し、早くも夫婦二人きりの生活が戻りつつある。
▼昨今は晩婚化が進み子供ができるのが遅くなる傾向にあるが、早く結婚してもキャリアを優先したり、子供のいない生活を楽しむためにわざと出産を遅らせるカップルもいるという。時期を選んでも子供に手がかかる時間は変わらないから、結局のところ子育てを後にするか先にするかだけの違いだと思うけど。まあこういう問題は欲しくてもできない人もいるから軽々なことは言えない。
▼本日理研の最終報告で、不正行為があったとされたオボカタさんも、たしかこの道に進んだ動機は不妊に悩む女性に希望を与えたいというものだった。そして「100年後の人類社会への貢献」を意識しながら、目下の研究に勤しんでいるはずだった。ところが今日の報告では、100年後の評価に耐えるどころか自分の研究が今すぐ日の目を見るために、彼女が意図的にねつ造や改ざんに手を染めたと結論づけている。
▼これに対してオボカタさんはすぐに(ゴゴイチ)反論のコメントを出した。悪意のない間違いを意図的な不正と決めつけられて憤慨している。このままではSTAP細胞の存在自体がねつ造によるものと思われてしまう…果たしてどちらの言い分が本当なのだろう。シロート目にもわかることは、ネイチャー誌に載った画像と問題の博士論文の画像の違いよりも、現在のオボカタさんと学位論文を取った時のオボカタさんの顔写真(学生証のものか?)の方が見た目よっぽど違うってことくらいだ。
▼オボカタさんが開き直って強弁しているかどうかはわからない。彼女のコメントについての感想を求められて野依理事長は「それは彼女は自分の研究に思い入れがあるだろうから」と答えていたが、それではわからない。そこで自分の経験に照らして僕なりに彼女の気持ちを考えてみた。僕がまだ小学生の頃のことだ。その頃はまだ神童と呼ばれていた僕は、テストでは9割方100点。磯村尚徳氏の「あの時世界は」を読んで、将来は特派員になりたいと思っていた。
▼そんなある日のテストのことである。たしか得意の社会だったと思う。最後の問題がどうしてもわからない。あきらめて一番後ろの席から立ちあがり、教壇に向かって歩き始め1/3ほどきたところで、見るともなくまだ答案中の級友の解答が目に飛び込んできた。咄嗟に僕は最寄の机にかがんで鉛筆を走らせていた。さらに中ほどでもっといい解答とおぼしきものが目に入り、また書き直した。そうやって教壇まで辿り着いたところで、先生から「そんなのインチキじゃん」と言われ心外に思ったことを今でもよく覚えている。
▼僕はなにもテストでいい点が取りたいとか、カンニングするつもりは全然なかった。ただその日だけでなくいつもそう思っていたのだが、少しでもいい答案にしたかった。その瞬間、まるでそこだけ光っているかのように、向こうから気の利いた解答が目に飛び込んできたのだ。オボカタさんの心情はこれに近いのではないだろうか。むろん子供の言い訳にすぎないが。
▼土曜は年度末工事でお世話になったベテラン現業社員にお礼の意味で焼肉をゴチソウする。なんか去年もそうだったような。彼はなんというか、良くも悪くも競馬でいう古馬のようなズブさを持った人で、とにもかくにもこういう「事を知っている人」が現場に一人いると、僕のようなアマチャンのシロートの子供はずいぶん心強い。
焼肉屋はメチャクチャ混んでいて、席に通されるまで一時間半待った。歓送迎会シーズンの土曜だからだと思っていたら、ふと壁の掲示に目が留まった。「毎月29日はにくの日。メール会員限定生ビール一杯100円」これだ。慌ててケータイを取りだし登録したが、こういうのも不正行為にあたるのだろうか。なにしろ研究者はたいへんだ。研究者じゃないけど。
▼食べ終わって外に出ると、もう雨が落ちている。産休するヨガインストのお別れ会で街に出ている妻といっしょに帰る約束だったのに、メールしてもなかなか帰ろうとしない。仕方なく妖艶なママの店で雨宿り。後ろのテーブルの三人組が消費税と渡辺喜美の話をしている。何度かメールのやりとりをするうち、とうとう「先に帰って」ときたからメールで怒ってやった。まったく行く前に行きたくないって言ってたやつほど長っ尻なんだから。傘もなく濡れながら二人で帰った翌日曜は大雨になった。

日曜は明太クリームパスタ。

月曜は牛丼。

今日はチキンのトマト煮にチキンサラダ。それにしても僕は妻と妖艶なママとオボカタさんが大好きと結論づけられても反論できないな。