母の日に

GW後最初の日曜日が、一年で一番素晴らしい気候だと個人的には思っている。恐ろしいほどいい天気なのに、暑からず寒からず、爽やかな風が吹いている。今日もそんな一日だった。とても静かな午前中を過ごした。
▼こんな日にうちにいるのはもったいないと、散歩がてら電車に乗って一人で街まででかけた。ホームで電車を待っている人たちも、普通ならスマホをいじったり、新聞か何か読んだり、誰かとおしゃべりしたりしているのに、顔をあげて虚空を見ている人が多い。さっきまで遊びに夢中だった子供が、不意に顔をあげて漠然とどこか遠くを眺めている時に見せる、あの表情だ。
▼一直線に本屋に向かい、注文しておいたリチャード・パワーズの「舞踏会に向かう三人の農夫」と蜂飼耳の「おいしそうな草」を受け取って、また一目散に戻ってくる。ホームにあがる階段から見えてくる空の広がり、戸外の気持ちのいい空気に束の間触れただけですっかり満足してしまったのだ。
▼うちに帰ると、朝から下の子の野球の応援に行ってた妻が寝ていたので、カレーの残りをチンして食べた。それから買ってきたパワーズのさわりを読むと、すぐに寝落ちしてしまうが、陽射しのないうちの中は意外に寒くてうまく寝つけない。そのうち下の子が帰ってきて、友だちと修学旅行のお菓子を買いにまた出ていった。
▼先日もらってきた背番号がヒトケタになっていた下の子は、毎日帰るなり素振をしに、今上ってきた階段をまた下りていく。どうせなら済ませてから上がってくればいいのに。いったんは僕らの顔を見て安心したいんだな。
▼家庭訪問に来た先生は「とにかくいい子なので、○○クンに何かこうした方がいいと言うことは何もありません。一応生徒全員のうちを回らなきゃいけないので来ましたが」と言って帰ったそうだ。「小学校の家庭訪問みたいで笑えてしょうがなかった」と妻は笑っていた。
▼修学旅行では、誰も引き受け手がいないようなとんでもない不良と同じ班になるそうだ。学校にも来ない子が修学旅行に行くのかと不思議に思うが、彼らが行かないなんてことはありえないらしい。そういう子ほど、修学旅行を楽しみにしていることがよくわかっている。人に影響されやすく、特に僕の言うことは絶対の下の子だが、親心から遊び相手に難色を示した時、「あいつはいいやつだよ」と譲らなかった。
▼運動会か何かの折、忘れた水筒を届けに行った妻が、たまたま見かけた金髪の子に渡してくれるように頼んだら、その様子を見ていたお母さんが近寄ってきて、「あの子知ってるの?」と言われたらしい。「ああ、小学校からいっしょだから」と答えても、ずっと怪訝そうな顔をしていたという。
▼人をみかけで判断しない。だから一般に「不良」と目されるような子たちとも自然体で接することができる。だから相手も胸襟を開く。だから誰とでも仲よくなれる。うちの子たち二人に共通する特徴だ。人を見かけで判断し、不良にはビビッて構えてしまう僕にはとてもマネできない。そんな僕からなんでこんな子たちが育ったかといえば、ひとえに妻のおかげというほかはない。
▼起きてきた妻とスーパーに買物に行く。お昼までとは違い、強烈な陽射しである。四階の玄関から道路を見下ろすと、陽光が反射して黒いアスファルトが白く見える。まぶしすぎる夏の光である。よっぽどビールでも買って帰ろうかと思ったが、代わりにアイスをたくさん買い込んだ。下の子も喜ぶだろう。
▼帰ると下の子から電話があって、友だちとゴハンも食べて帰るという。妻と二人で夕食を済ませ、交代でそれぞれ実家に電話をかけた。今日は母の日だ。
金曜はブリテリ。

土曜はツナマヨパスタ。

そして今日の変わりハヤシに3時のオヤツ。

▼夜になって、妻に長男からメールがきてライン(吹き出しタイプのメール)でしばらく話していた。東京の合宿からの帰りの電車の中だそう。ニキビがひどく、声がガラガラだという。最後に「母の日だから(メールした)」ときて返事がこなくなったらしい。

最後に下の子の今日の試合の模様。