サルとヤギのキメラ

相変わらず陽射しは強いが室内は寒いくらいだ。今日は一日Tシャツの上にトレーナーを着たり脱いだりしていた。午前中妻にちょっと買物を頼まれて外に出る機会があったが、室内外の光のコントラストがあまりに大きすぎて目が眩んだよ。
▼6月の中ごろまでは日曜も休めるので、ゆっくりテレビ桟敷にかぶりつきである。話題は西沙諸島沖の体当り事件をきっかけにベトナムエスカレートする反中デモの模様。先日シンゾーソーリが会見を開いて説明した憲法解釈変更による集団的自衛権行使容認問題。フクシマを訪れた主人公が鼻血を出す表現が物議を醸しているマンガ「美味しんぼ」。そして人気ポップ歌手ASKAの覚せい剤所持容疑による逮捕など。
チャゲ&飛鳥は、ちょうど僕が中学生の時にデヴューしたフォークデュオ。デヴュー曲「ひとり咲き」がそこそこ、続く「万里の河」が大ヒットし、当時はご多聞にもれずフォーク少年だった僕も一時期ハマってよく歌っていた。バブル期の「SAY YES」や「YAH YAH YAH」のスーパーヒットの印象があまりに強烈でカリスマスターのように言われているが、35年のキャリアの割に言うほどヒットは多くない。
▼楽曲提供を含めても、初期は前出の2曲に加え、葛城ユキの「ボヘミアン」、バブル期のブレイク前に「パラダイス銀河」など光GENJIのヒット曲があるが、これらは葛城のキャラやジャニーズの力も大きい。その他にソロで「はじまりはいつも雨」が大ヒットしているが、チャゲアスでの二大ヒットにこれを加えてバブル三部作といえるだろう。90年代後半以後のヒットは皆無。つまりキャリアは実質的に約半分。彼もまたバブルの寵児だったわけだ。
覚せい剤に手を染めた芸能人で記憶に新しいのはのりピーこと酒井法子。それから元光GENJⅠの赤坂某。「失恋レストラン」のヒットから後にVシネマ俳優に転向した清水健太郎。シンガーソングライターの槇原敬之もそうだ。ASKAは前二者に楽曲を提供しているから、そこで接触があったかもしれない。のりぴー実弟暴力団構成員である。
▼芸能界という業界は特殊な世界だ。大ヒットを飛ばしたASKAには様々な誘惑があり、いろんな輩が近寄ってきたのは想像に難くない。その手の反社会的勢力の助力がなければ、興行的に立ち行かない場面もあっただろう。こういういう事件の度に思うのは、麻薬の供給サイドの検挙はどうなっているのかということだ。捕まるのはむしろ被害者ともいえる使用者か末端の運び屋ばかり。学校の校長先生や警察官自身に逮捕者が出るほどだから、おそらく警察組織にまで手が回っているのだろう。
▼のりびーをはじめ、日本で成功し、その後落ち目になった他の多くのタレントと同じように、2000年前後からアジアに活路を求めたチャゲアスは、韓国でチケットが全く売れず、事務所は倒産したらしい。当時民団向けのフリーペーパーを売り込もうと画策していたブラックジャーナリズムに関わっていた僕は、デモ用の記事のためにチャゲアス韓国公演について調べたが、僕の知る限り日本の情報エンタメや音楽雑誌でこれを失敗と報じたものはなかった。
▼寄らば大樹の陰。組織に属さない個人の力はあまりにも弱くはかない。一時代を築いたスーパースターも所詮は見世物小屋のサル、使い捨ての存在だ。そして舞台上で華やかなスポットライトを浴びるサルを、奈落の暗闇からじっと見つめる人たちがいる。彼らは見世物のサルが一般的な意味で利用価値がなくなり、誰からも相手にされなくなった頃になってそっと近づく。
▼闇社会の構成員はおよそ10万人、収入であるシノギは一兆円を超えるといわれる。そしてその約半分が覚せい剤によるものだ。どういうカラクリなのか、警察はけして供給元に手をつけようとはせず、もっぱら被害者である使用者だけを検挙する。そしてかつての大物芸能人は、警察がエクスキューズで打ち上げる恰好のアドバルーンになる。

土曜はカリカリオーブンポテトにチキンテリ。

そして今日は天ぷら蕎麦(冷やし)