犯罪者のアイデンティティ

今日から梅雨入り。週末にかけて大雨の予報である。季節はずれの暑さも一服だ。父も精力的にブログにタイ在記をアップし始めた。これから一ヶ月間楽しみだ。そういえば自由人さんの最新エントリに林試の森の桑の実の写真が載っていた。僕がブログに桑の実の想い出を書いたのを読んでくれたのだろうか。だとしたらうれしいね。
▼あまりにもやることがないので、今日は志願して幹部社員のツキイチの自社パトロールに参加させてもらった。担当以外の事業所に入場するのも初めてだが、若い監督たちのレベルの高い仕事ぶりに仰天した。じゃあ僕がいつもやってる仕事はいったい何?思わず「まるでゼネコンだ…」とつぶやくと、僕より年下の役員に「バカ、うちもゼネコンだ」と怒られてしまった。いつまでもシロート感覚が抜けなくて困るよ。
▼普段は他人の仕事を見ることがないのでなかなか気がつかないが、こういう機会に思う。普通の人が一生にまともにできることは、やはりひとつぐらいのものじゃないかと。若いうちに勉強した道に進み、20代で実地訓練を受け、30代で一人立ちし、40代で小さなセクションのリーダーになり、50代で後進を育て、60で定年を迎える。これでやっと一人前。40手前までフラフラしてた僕がハンパなのは当たり前だ。
▼僕は今、ようやくひとりで仕事をこなしていける段階である。人を指導するのはもとより、人を使うこともできない。仕事の規模もそれなりだ。専門知識の土台がないというのは言い訳にならない。この世界で生きていく覚悟があるのなら、今からでも構造計算のひとつも勉強して資格をとるべきだろう。正直なんの興味もない分野だが、生きていくためには仕方がない。あーつまらん。僕は本当にどうしようもない人間だ。まだフラフラしている。
▼さて、最近のニュースの話題は、大阪西成の准看護師殺害事件の続報と、9年前の栃木小1女児殺害事件の犯人逮捕である。およそ殺人事件の犯人に感情移入するのは難しいが、特に西成の事件はそうだ。遺体を人形と称して宅急便で送りトランクルームに放置する。被害者になりすましてパスポートやカードを取得し出国する。その大胆なやり口は、ある意味日本人離れしている。殺害に関与したと思われる女性は、小中と被害者と同じ学校に通った「日系」ブラジル人だが、アイデンティティは犯罪大国ブラジルの文化をより色濃く受け継いでいるようだ。
▼一方の勝又容疑者もまた、小学生の時に母親といっしょに台湾から来日している。日本語がカタコトで、小中ともほとんど学校に行っていない。中学卒業後就職するが長続きしなかったというのは当然だろう。その後は母親の骨董市への出品を手伝うようになる。それからほどなく事件に手を染めた後も、9年間似たような生活を送ってきた。つまり世間と接点のない生活だ。この間日本国籍だけは取得しているが。
▼二つの事件に共通するのは、加害者が日本人ではないこと。つまり被害者も弱者に違いないが、加害者も十二分に社会的弱者であることだ。数年前再び日本に入国した日系ブラジル人女性は、不法滞在の状態だった。すなわち一人では職も住居もままならないということだ。中国人留学生の住まいに居候しているうちはいいが、彼女が帰国すればとたんに困窮する。彼女が他人になりすましたというのが悲しい。日本には、彼女が自分自身のままで生きていける余地はなかったのだ。
▼なりすまし殺人の日系ブラジル人3世や、台湾から日本に帰化した勝又容疑者のような微妙な立場の外国人(日本人)はけしてめずらしくはない。しかし社会的には完全に弱者だが、今のところ多数派とまでは言えない。これが完全に多数派になった時、日本社会はなんらかの対応を迫られることになるだろう。
▼この件についてネットユーザーの中には、外国人労働者の受入自由化を治安の悪化と結びつける意見も多いが、それは間違っている。僕が多数派というのは、抽象的な差別と嫌悪の対象としての外国人労働者のことではない。パソコンをいじるしかない引きこもりも含めた極めて具体的な生活困窮者、あるいは生活不安者、あるいは将来絶望者のことだ。要するに他人事ではないのだ。

月曜カレー。

火曜和風パスタ。そして今日は昼に食事が出たので弁当を夜に回した。
▼昨日、歯を磨こうとして、ふと歯ブラシが少ないような気がした。確かに長男の分が1本減っている。女の子を亡くされた親御さんは、まだ歯ブラシをとっているだろうか。