夏の終わりに

ここ数日、ようやく夏らしい陽射しが戻ってきた。陽が出ると気温は簡単に35度前後まで上がる。地表も熱せられて熱帯夜になる。しかしもう夏の盛りとはいえない。雲の形も真夏のものではない。風も吹いている。それなのに猛暑日だ。やっぱりなんかおかしい。
▼今年は全国的にみて雨が多く、冷夏といっていいと思う。特に九州北部は、妻の帰省中を通してずっと雨が降りつづき、ほとんど30度に届かなかったという。九州ほどではないが、こちらもぐずついた天気が多かった。しかし東京は猛暑日が多く、なかなか冷夏とはいいにくいだろう。なんといっても東京が日本の中心だからね。
▼さて、暑さとともに妻が十日ぶりに帰ってきた。もう夕刻になって、仕事帰りに駅で拾ったので、その日まで外食ということになった。十日という数字がひとつの限界かもしれない。長い外食暮らしにもなんとか持ちこたえていたが、期待していた分落胆も大きく、その晩はとうとう気持ちが悪くなってよく眠れなかった。今後少しずつ体調を戻していきたい。
▼妻が帰ると同時に、不思議なことが起こった。十日間仲よく二人でいっしょに寝て喧嘩ひとつしなかった兄弟が、妻が帰ってきたとたん大ゲンカをはじめたのだ。掃除、洗濯、食器洗いなどの家事をやった、やらないというアピール合戦である。まるで王女が不在のお城をどちらがちゃんと守ったか争うナイトのようだ。ホントに子供はおもしろい。もうそんな年じゃないけど。
▼夏の風物詩、甲子園もベスト4が出そろい、いよいよ佳境である。今年の特徴は、抽選のイタズラで有力校同士が一回戦からつぶし合い、早々に消えてしまったこと。したがって、三回戦、準々決勝になってもなお、序盤から大差のつく大味な試合が多くなってしまった。これはここ数年の趨勢でもある。
▼全国から選手を集める有力校のマシンを打ち込んできた打力は凄まじく、投手の消耗はいかんともしがたい。プロ並みの設備でウエイトトレを積んだ屈強な野手が折れない金属バットを強振すれば、当たり損ねでも内野の頭は超える。打者一巡のビッグイニングが生まれやすい。某校の一試合二桁盗塁や、別の学校の毎試合二桁得点は、ある種凄惨なリンチを想起させる。
▼まずは地元大阪、東京など首都圏の有力校へ、そこから選に漏れた選手が四国、九州、北海道、東北の各地に散らばってゆく。リトルリーグからつづく親子鷹の夢を否定するつもりはないが、もはや高校野球に親子蛙の居場所はない。越境入学と金属バットを禁止しない限り、甲子園は常連校のバッティンング練習場と化すだろう。その光景は、どこか酷暑と集中豪雨の近年の異常気象に似ている。
▼さて、甲子園が終わればいよいよ夏も終わりである。野球エリートではない普通の子供たちは勉強に頭を切り替える時期だ。「ガキヒ強い」相変わらず自分が読める字だけ読む癖が直らない下の子だが、勉強の意欲だけはある。野球の応援も好きな下の子に、高校野球の応援テーマは全て六大学野球、なかんずく早慶戦のパクリだと教えてやると、特に「若き血」が気に入ったらしくスマホのユーチューブで繰り返し見ている。ひょっとすると蛙が大ジャンプするかもしれない。

妻の復帰第一作は得意のガパオライス。