幸せな結末

日曜は一日中そぼ降る雨の中で工事。いくら室内とはいえ気が滅入る。2週連続で延期になっていたので、ストレスがキャリーオーバーして気分は最悪だ。
▼仕事が終わってうちに戻ると上の子が回転寿司のバイトに出かけるとこだったので、妻と下の子の三人でヒヤカシに行くことにした。雨の日の日曜の大型ショッピングセンターの改装オープンセールの隣接店舗という最悪のコンディションである。駐車場に入るまで30分、受付して席に通されるまで30分かかった。
▼ダダ混みの店内のシートに座って待っていると妻が急に立ち上がった。どうやら知り合いが入ってきたようだ。以前ボスのヨガ教室でいっしょだったらしい。相手「あらー久しぶりー」妻「○○(以前のジム)やめたの?」相手「今××(市内一の高級ジム)行ってるの。あなたは?」妻「私ヨガの講師になっちゃった。○×先生(ボス)子供生まれたのよ」相手「それは知ってる」
▼いきなり物凄いラリーの応酬だ。回転寿司の待合が一瞬にしてツアーファイナルの決勝の舞台になったかと目をこする。出場中のKも真っ青の火の出るようなサーブにリターン。いや、後半に強いKより試合の入りはずっと上だ。初球からただの一球の捨て球もない全球勝負球である。
▼シートに座った僕と下の子を彼女がチラッチラッと横目で見る度に、人のいい僕たちは頭を下げるがシカト。「ねえママ…」娘さんが何を言っても相手にしなかった彼女が動いたのは、おそらく駐車場に車を停めていたであろうご主人が、遅れて店内に入ってきた時である。「主人です」彼女は満面の笑みで妻に自分の夫を紹介した。
▼「チッこれみよがしに」先に番号を呼ばれ笑顔で別れた途端いまいましそうに妻がつぶやいた。妻が言うにはダンナさんはお医者さんだそうだ。まったく女の見栄の張り合いにはただただ感心するしかない。男がプライドの生き物だとしたら、女は見栄のバケモノだ。男は単なる飾りでしかない。「どう?これ。いいでしょう。私にピッタリじゃない?私がいいからよ」というわけだ。
▼店内は混雑のピーク。ネタとシャリがバラバラになった皿がどんどん増えていく。きっと調理場は戦場だろう。なんせ上の子がやっているのだ。「いや、作らせてもらえないよ」「たぶん洗い場専門ね」可愛らしいホールの女の子を見つけて「あのコ○×(上の子の名前)にちょうどいいんじゃない?」と三人で勝手なことを言いながら食べ進める。
▼下の子が隣りに座らせてくれないので妻と並んで座り、少しずつたくさん食べたいので一皿二貫を妻とひとつずつ分ける。食い意地の張った僕がレーンの側に座り、自ずとお箸やお茶やお醤油を妻にとってあげる形になる。何十個も食べれば、テーブルの状態によっては一度くらい妻の口に食べさせてあげた方が自然な状況も生まれてくる。
▼店員にお皿を数えてもらい、立ちあがって振り向きざま先ほどの彼女と目があった。僕らの斜め後方で、わざわざ見ようとしなくてもイヤでも僕らの様子が目に入ってくる位置である。彼女は娘と並んで座り、お医者さまのご主人は、当然ながら彼女のトイメンにいる。僕が会釈すると、彼女はその日四度目にして初めて会釈を返した。
▼帰りにいつものブックカフェに寄って食後のコーヒーを楽しむ。テニスに例えるなら、妻はシングルではタイブレークの熱戦の末惜敗したが、僕との混合ダブルスではラブゲームからの大逆転勝ちをおさめたことになる。なんのこっちゃ?しかし運転する妻の横顔は、たしかに勝者の輝きに満ちていた。
▼読書熱が下降気味の僕は妻と下の子を置いて同じショッピングモールのアウトドアショップでmont−bellの秋冬ものをチェック。すると値札の3605の文字が目に飛び込んできた。すわとられてなるものかとひっつっかんでレジに歩きかけたところで念のためもう一度確認すると、5の後に半角スペースくらい空いて1とある。アブナイ。ヒトケタ違った。税込表示のおかげでとんだ赤っ恥をかくとこだった。まあ税別表示も危険だけど。
▼今日まで雨が残るかと思ったら、すっかりいいお天気だ。少しは冷えるかと思ったが、いっこうに寒くならない。これだけ暑いとやっぱり明日はぐずつく模様。そしてその後は今度こそ本当にようやく寒くなるようである。

今日はレンコンとサツマイモの炒め煮に夏野菜サラダに豚汁。