世相と流行語

雨があがって冬の空気に変わった。今日は今年初のフリース出勤だ。今週いっぱいは十度そこそこの気温が続く。いよいよ12月である。新聞に今年の回顧記事が出始め、流行語大賞が発表された。この調子で暮れまであっという間だろう。一年たつのが早い。
▼今年の流行語大賞日本エレキテル連合の「ダメよ〜ダメダメ」と、作者不詳の「集団的自衛権」。「集団的自衛権」の方は、誰だか知らないが受賞を辞退されたらしい。しかし少なくともどなたかに打診はなされたわけだ。そうでないと辞退することもできない。それはいったい誰だろう。アベちゃん?日本政府?畏れ多くも天皇陛下?国の方針を大転換するような重大事を恣意的に決めておいて、言いだしっぺが誰かはっきりはさせない。これぞまさしく主語も責任も曖昧な日本の集団的自衛の知恵だね。
▼次点の「ありのままに」は、社会現象ともいえる映画とその主題歌の大ヒットからすれば、大賞でもおかしくなかった。なにしろ同じ曲を原曲、吹替松たかこ版、吹替えMay J.版の三曲が三曲とも十週連続トップ10入りする弾けようだ。それがなぜ次点かというと、言葉にイマイチ現実味がなかったからというほかはない。現実社会は人がありのままでいられるような場所ではない。口にするだけ虚しいようでは流行語とは言えないだろう。だからこそのファンタジーの出番である。
▼しかし今年の上半期の話題を席捲したSTAP関連ワードは見事に黙殺されていたな。素直に考えればオボカタさんの決めゼリフ「STAP細胞はあります」。「STAP現象」または「STAP(細胞)」だけでもいい。あるいは「コピペ(世代)」とか。「ねつ造」「改ざん」「悪意」「研究不正」のどれかまたは全部。尊敬するササイ先生の「僕のシンデレラ」はないか。けど候補にあった「カープ女子」よりは「リケジョ」だと思うけど。
▼日曜夕の日テレ系報道番組「バンキシャ!」で、統合失調症の特集をやっていた。チャンネルをザッピングするうち、ひきこもりの弟を心配した姉(ともに40代)と依頼を受けた専門スタッフが、彼に病院に行くよう説得する場面にひっかかかった。顔はぼかしてあるが、髪もヒゲも伸び放題で病的に痩せた弟は、確かにスタッフが言うように「このままでは命にかかわる」危険性が見てとれる。
「弟」は有名大学を出て一流企業に就職したが、20代の後半から意味不明のことを口走るようになる。実家にひきこもった彼の面倒を見ていた両親も認知症を患って施設に入り、心配した姉がNPO法人を頼った。Vを見てコメントを求められたゲストが「あそこまで進むと難しいが、早いうちに適切な処置をすれば社会復帰も可能」みたいなことを言っていたが、僕は全く別の感想を持った。
▼彼は職責のプレッシャーに押しつぶされてしまったのだ。ある日彼は、その会社で日々与えられるノルマをこの先もこなしていく能力が、自分には備わっていないことに気づく。世の中にはそういったストレスから割合自由な仕事もあるが、一流の大学、一流の会社というコースをたどると、逆の意味でつぶしがきかない。プライドが邪魔をして、自分が自分にそうなることをゆるさない。そうすると、平たく言えば精神病になるしか道はないのである。
▼その後Nスぺの「攻防 危険ドラッグ〜闇のチャイナルートを追う」を見た。威勢のいいキャッチコピーの割に全編モザイクで構成された番組には肩すかしをくったが、この種の薬物の潜在的需要が無限にあることは容易に想像できる。ネット社会の到来により、普通の人が入手しやすい環境になってそれが顕在化した。飲酒や喫煙の数字が減った分だけそっちに流れている感じだ。現代人はそれほどにストレスを抱えているのだ。そういえば「危険ドラッグ」も流行語にノミネートされてたっけ。
▼これらのことから見えてくるのは、年を追うごとにストレス社会の度が増しているということだ。そして流行語大賞には、そんな世相の一端が垣間見えるのである。

日曜はカレイの煮付にレンコン炒めにもやしサラダ。

月曜は鮭におやきにホウレン草のソテーに根菜サラダ。僕が帰った時にはほとんど子供らに食べられた後だった。

そして今日はポークソテーにレンコンサラダに豚汁。僕が食べようとすると、先に食べている下の子が必ず「おいしいよ」と言う。