セールスマンの死

ここ二日ほどの寒気がようやく緩んだが、全く恐ろしいほどの寒さだった。各地で大雪被害が報告されている。今年はエルニーニョで暖冬じゃなかったのか。だが寒い割に雨が多い。ちょっと暖かくなったと思うと明日はもう雨の予報だ。週一以上のペースである。やっぱりエルニーニョかな。寒いか雨か、せめてどちらかにしてほしい。
▼年頭から世間を騒がせたSTAP騒動が年内に決着を迎えた。かなり早い段階で、おそらくは論文に疑義が示された時点で既に、関係者の間ではSTAP細胞は「ない」と判断されていたのではないか。その意味では元々かなり無理がある発表だったのだろう。年を跨がずに幕引きを図りたい思惑もあるのだろうが、中心人物に自殺者まで出した事件である。なぜこのような事態になったのか、関係者には真相を明らかにする義務があるはずだ。
▼仮に巷間言われているような、研究費獲得のための成果至上主義が招いた悲劇だとすれば、自殺したササイさんに限らず、ある意味オボカタさんも犠牲者のようなものだ。現代競争社会においては、科学者も俗世間から遊離した象牙の塔の住人にとどまってはいられない。そのこと自体は何も悪いことではないが、競争に敗者はつきものだ。ノーベル賞の中村教授のように、人類への貢献と自身への見返りの二兎を追うことに葛藤のないタイプでないと生き残るのは難しい。
▼繰り返すがそのこと自体はめずらしいことでも特別なことでもない。技術者が自ら営業して回るようなものだ。逆に営業マンも、自社の技術や製品についての知識がなければ務まらない。科学者もプレゼン能力に長けていなければ、満足に研究を続ける環境も保証されないのだろう。科学者が自分の研究をアピールする場は論文である。自殺したササイ氏は、この論文作成能力に秀でていた。そして確かにオボカタ氏も、他の研究者に比して優れたセールスポイントを持っていた。
▼それは洞察力や忍耐力といった科学者に必要な能力というよりもむしろ、女子力というべきものだったのではないか。割烹着、ムーミン、ビビアンウエストウッド…。思えばSTAP細胞の発表には、研究そのものとは何の関係もないオボカタ氏個人に属する情報が多すぎた。本人が意識的だったかどうかは別にして、また彼女が望むと望まざるとに関わらず、誰かが明確な意図をもって彼女の女子力を利用したのはまちがいない。平たく言えば客寄せパンダである。そして何度でも繰り返すが、世の中そういうものだ。
▼先天的に重篤な疾患を抱えた人やその家族にとって一縷の望みであり、さらには不老長寿という人類の究極の夢に繋がる可能性を持つ再生医療分野は、同時に特許と開発を独占する者に巨万の富を約束する最先端技術でもある。闇があるから光があるように、人間の欲望がなければ科学技術の進歩はない。そして一握りの成功者の影に、数多の敗者の骸が累々と横たわっているのは科学の世界も他の職業も同じことである。世の中は敗者に厳しい。利用価値のなくなったものはすぐに捨てられる。
閑話休題。いよいよ暮れの帰省が近づいてきたのか、ネイルに美容院にと妻は連日大忙しである。全く気づかなかったが、足はともかく手のネイルは一定期間家事から解放される帰省前にしかやらないそうである。やっても炊事洗濯を普通にすればすぐに剥げてしまうらしい。派手なネイルをしている女は普段家事をやらないとみていいだろう。いくら放送用とはいえ、巻き髪に厚化粧のオボカタさんも…。
▼その妻の最新ネイル。

この色の組合せには見覚えがある。エロ本の同じ編集部にいた女性編集者が、エロ本の仕事とは別に知人にデザインを頼まれたと言って見せてくれたチラシの色使いに奇跡的なほど似ている。
▼彼女は当時僕の上司だった編集長がご執心だったのが頷けるほどの清楚な美人だった。そんな人がどうしてエロ本の編集部にいたのか詳しい事情はわからない。ただ一度二人きりで飲みに行ったことがある。それとみんなで飲んでいた時に大ゲンカになったことがある。きっと僕も彼女に惹かれていたのだろう。ただデザインの色使いだけはその後の編集の際の反面教師にさせていただいた。中間色を使いこなすのは難しい。あくまでエロ本の話ですよ。彼女のチラシも妻のネイルもよく出来ていると思います。ペロッ。

昨日は鍋の嫌いな(なんで?)下の子が唯一好むミルフィーユ鍋。

そして今日は絶品カラアゲ。