嵐の前の静かな夜

一昨日の雨はかなりひどかった。最近は降ればドシャ降りという感じだ。降り方がおかしい。少なくとも冬の雨ではない。昨日などは雨の後なのにまるで春の陽気だった。朝、予想外に路面が濡れていた今日は、ようやく寒中らしさが戻ってきた。
▼昨日は仕事帰りに車載テレビでアジアカップイラク戦を観戦。解説の松木安太郎は相変わらず「おーっ、今のキーパーいなけりゃ入ってたねー」みたいなノリである。これじゃあお茶の間で応援する僕らと大差ない。まあそこが親近感の持てるとこなんだろうけど。結局のところ日本が勝てばなんでもいいのだ。試合は本田がPKを決めて1-0で日本の勝利。
▼サッカーはシロートの僕も、日本が弱いことだけは断言できる。「イスラム国」のような新興勢力が瞬く間に支配地域を拡大する。イラクは今、国家の体をなしていない。それもこれもみんなアメリカのせいだが、もし日本がイラクと同じ内戦状態だったとしたらどうだろう。ここまでのパフォーマンスが可能だろうか?答えはノーだ。雇われ監督の八百長疑惑ぐらいでアタフタしているのである。おそらく出場すらしていないだろう。
▼十数年ぶりにソファを買い替えた。いや、結婚以来だから二十年ぶりである。擦り切れてボロボロなのも当然だ。破れはカバーで隠せるが、ワタの性がなくなったのはどうしようもない。クッションが効かず、枠の板が尻に当たってどうにも座り心地が悪かった。だが今の今まで、このたかだか数万円の出どころがなかったのだ。
▼洗濯機、冷蔵庫、テレビ、クーラー…思えば結婚十年目あたりから、つまりこちらに越してきてやっと落ち着いた頃から、数年毎に耐久消費財の寿命がきて、その都度買い替えるのに苦労した。どれもそれなりに値の張るものばかりだ。時期が重ならなかったことがせめてもの幸いである。それもこのソファでほぼ一巡だ。
▼前のソファは二人用。くっついて座ることに違和感のない新婚さんならともかく、大人が並んで座ると窮屈だ。といって借り住まいでは大きさにも自ずと限界がある。そこで三人用の、肘掛の低いものにした。生活が不規則で帰宅が遅くなりがちな上の子も、これならいちいち布団を敷かなくてもベッド代わりに使えるだろう。
▼年度末工事の動きが遅くてコワイ。日曜が休めるのはうれしいが、2月3月にシワ寄せがいくだけだ。半年分を二ヶ月で稼がなければならなくなるのもコワイが、かといってノルマに届かないのはもっとコワイ。来週からはいよいよ3末まで休めないので、この土日は連休にするつもりが、昨日急にドブさらいを拝命してしまった。全く勘弁してほしい。デートの約束をしていた妻はカンカンだ。
▼休憩なしでなんとか昼過ぎまでに作業を終わらせダッシュで帰宅。お目当てはデパートの地方物産展。土曜の昼時とあって、会場はダダゴミだ。ラーメン、海鮮丼、ソフトクリーム、チーズケーキ…どのブースも長蛇の列である。キャッチフレーズは「北海道がうまいのは冬なんです」。でも僕が仕事をたのんでいる沖縄の労働者が言うには「食べ物は北に行くほどうまくなる」らしい。残念だがそいつは冬に限らず永遠の真実だ。
▼いくら丼の誘惑に負けてついてきた下の子と妻の三人で、意を決して興奮の坩堝に飛び込み人波をかきわけかきわけ海鮮丼と白い恋人と巨大スルメイカをゲットし、ジェラードでクールダウン。

昼は試食でごまかして海鮮丼は夕食に回すつもりが帰りつくなり待ちきれずにがっついてしまった。

▼早めの夕食で時間に余裕ができたので、夜は今年初のブックカフェに。たっぷりのカフェラテを注文し、テーブルを挟んで夫婦それぞれの時間を過ごす。「今年は新婚旅行(グアム)以来の海外(台湾)に行きたい」という妻は旅行雑誌ばかり見ている。結婚20周年だから、できることなら叶えてやりたいと思う。僕が「(非情城市の舞台である)九扮には行きたいね」と言うと、「絶対行く!千と千尋の舞台よね」と妻が答える。
▼店内をひと回りしてみる。新刊コーナーの隣は店長おすすめ本の棚だ。畑野智美は僕も好き。本のチョイスといい、紹介文のポップ文字といい、女性の可能性が高い。しかし地域最大手の本屋の、なおかつ大型ショッピングセンターに入った主力店である。かなりのやり手か、それなりの年齢とみていいだろう。
▼いっしょに「非情城市」を観に行った彼女も、途中でやめていなければ、本屋さんに勤めているはずだ。全国展開のかなり大きな書店である。もう店長でもおかしくない年だ。

一昨日はヨガカレー。

昨日はブリテリ。この寒いのに子供らは遊びに行ったきり帰らない。夫婦水いらずの夜が静かに更けてゆく。