華麗なる一族

今日もまた雨だ。雨が多い時期とはいえ降りすぎだ。おまけに気温はどんどん下がる。チョー寒い。
▼生憎の天気の中、昨日は某大手ゼネコンの監督と期末工事のお疲れさん会。昨年に続き二度目である。取引のある大手の中では比較的つきあいが浅い方なので、カウンターパートナーである彼を突破口に営業所の他の方を連れてきてもらうとか、あるいはそのゼネコンのウチの営業担当は僕じゃないので、そいつを連れてくるとかするべきなのだろうが、人間関係は難しいので無理はしない。無理は禁物だ。
▼それなら二人きりで誰憚ることなくストレートにこちらの知りたい情報をきいてもいいのだが、差し向かいというのも気づまりなので、つい別の業者の番頭(大先輩)も誘ってしまう。果たしてこれで良かったのか悪かったのか。日本酒が好きな方なので、一軒目は会社で使う割烹の個室をとる。しかし会合の性格からすると少し敷居が高すぎたかも。飲物別のコースだが、遠慮して安いお酒しかたのまない。
▼二次会は去年と同じ高橋真梨子ママの店に。女の子がいるわけではないが、筋のいい店なので安心だ。ここでいっしょに行った業者の番頭(大先輩)が興味深い話をする。その業者(業種を明かすだけでわかる人にはわかるので伏せておく)の先代の社長は某有名歌手の元夫で、娘は売れっ子芸人と結婚するまでニューヨークにいたという。この辺では有名な話らしいが、当事者からきくとまた違ったリアリティがある。
▼創業100年を超える老舗中の老舗の二代目が超のつく遊び人で、家業は番頭に任せて自身は一切手を出さなかった。子供は何不自由なく育て、東京の有名私大にやった。その将来の三代目に、ほとんど国民的ともいえる大物歌手が恋に落ちる。ほどなくその大物歌手と別れ家業を継いだ三代目は、地元で別の女性と結婚する。そして今はまだ三十代の、大物歌手とは別腹の四代目を、僕の隣にいる番頭たちが支えている。
▼年商50億にも満たないたかだか地方の一専門業者でも、創業者一族の生活というのは我々月給取りの想像が及ばないところにある。そこにはちょっと仕事ができるとかできないとかいうのとは別の法則が支配している。ただただ遊び呆けていても、大物芸能人がなびくようなスマートな子が育つ。しかし番頭がいくら優秀でも、国民的歌手に子を産ませることはできないだろう。ママも一度だけ来店した三代目を見たことがあるらしいが、「物静かで線が細くお仲間とは毛色が違った」そうだ。
▼三軒目は監督のいきつけの店の○×周年記念。雨の火曜だがさすがに店内はいっぱい。隣りのテーブルにでっぷりと太った作業着姿の地場ゼネコンの監督らしき人たち。僕も他人から見れば同じに見えるのだろうか。いったい何人いるのかわからないくらい女の子がいる。ひとりひとりはそれなりに可愛いのに全体としては残念な印象を与えるのはなぜ?普通は逆だ。僕についた子が自分のことを「ママの娘」だというので、監督に「ホントですか?」ときくと、「いや、そんなはずはない。東大の大学院に行ってる息子はいるけど」って、それもないだろ。
▼日付が変わる頃、いつものようにタクシー券を配って解散。僕はもう一軒、大竹しのぶママの店に寄ってみるも既に灯りが消えている。早すぎる。まず女の子がいること。さらに店の○×周年や女の子の誕生日でもない限り雨の平日に客なんて来ないんだな。高橋真梨子が復活したと思ったら、今度は大竹しのぶが心配だ。僕も気苦労が絶えないな。
▼一夜明けた今日は下の子の入学式。卒業式につづく大雨に再び妻のアッシーにされる。まあ今日は仕事がないからいいけど。妻は大きな鳥がプリントされたワンピに長いイヤリングにターバンという相変わらず独創的なファッション。たまたま横になったお母さんと話していたら、「あのー、お店かなんかやってません?やってたら行きたい」と言われたらしい。さもありなん。妻は色白だが、これが地黒ならアフリカの大統領夫人だ。
▼西川和美の「永い言い訳」を読了。とにかくおもしろくて一気に読んだ。人物造形からちょっとした比喩に至るまで、あまりの巧さに舌を巻く。映画と同じキレがある。(って一本しか見てないけど)。宮部みゆき吉田修一からクライム色を抜いて味の素をふった感じ。ただ、あまりに巧すぎて小器用な番頭にならないか心配だ。僕も気苦労が絶えない。上手く書こうが下手に書こうが、その世界のことならよく知っている。監督や番頭なら昨日も飲んだ。僕が知りたいのは、自分の想像力の埒の外だ。
▼今日は入学式帰りに親子三人で寄ったセルフうどんチェーンで天ぷらを取りすぎて気持ち悪くなり簡単な夕食。昨日は会合。一昨日の分の写真を送ってくれと声をかけたら、既に夢の中の妻が火がついたように怒って今日は久しぶりに写真なしのエントリ。下の子の朝練があるので、妻は明日から3年間毎朝5時起きで弁当を作らねばならない。つられて僕の弁当も多少グレードアップするだろうと密かに期待している。