誰にも似てない

五月になった。初夏らしい好天が続いている。気温もぐんぐん上がり、連日各地で25度を超える真夏日だ。道行く人も短パンポロシャツとすっかり夏の装いである。だが本当の夏はこんなもんじゃない。間違いなくあと10度は高くなるなんて信じられる?
▼ブログも更新しないまま、ズルズルと連休工事に突入してしまった。特に忙しかったわけじゃない。単に仕事以外にトピックがなかっただけである。仕事以外にすることがない。僕も典型的な濡れ落ち葉予備軍だ。それなら仕事に精を出せばよさそうなものだが、その仕事も「向こうからやって」こないと何をしていいかわからない。全く僕はこれからどうなるんだろう。
▼ともあれ今日で工事も一段落。明日から少しゆっくりできる。考えてみれば年度末工事の休息もろくすっぽとっていなかった。下の子の部活も休みということで、ひと月ぶりに朝寝坊できる妻が歓喜に震えている。お祭りの前夜祭に対抗して近所の焼鳥屋でささやかなGW前夜祭だ。こういうところならいくら飲み食いしても知れている。
▼広い駐車場付の郊外のチェーン店は、カウンター客はゼロなのに座敷は家族連れでいっぱいだ。焼鳥屋が初めての下の子は「おいしい」を連発してよく食べる。



思えば僕も子供の頃、大人になったら焼鳥とか寿司を好きなだけ食べるのが夢だった。その中にはマックのハンバーガーも入っていた。食べることが子供たちの夢でなくなった頃からマックの凋落は始まっていたのかもしれない。
▼うちに帰ってソファで眠り込んでしまい、目が覚めてNHK「SONGS」の忌野清志郎特集を見る。渋谷公会堂での命日ライブを終えたばかりのミュージシャンたちと、喉頭ガンからの復活ライブ映像を囲む。今年は七回忌。亡くなってもう6年が経つのが意外だった。反核ソングを歌った彼は、東北大震災も、従ってフクシマ原発事故も知らないことになる。
▼司会の猪苗代湖ズ箭内道彦清志郎の魅力を訊ねる。Charが「日本のロックの可能性を最初に提示してくれた」といい、奥田民生が「歌が超ウマイ」といい、トータス松本が「奇抜な恰好」といい、濱崎貴司が「ユーモアのセンス」といい、知らないミュージシャンが「守ろうとする姿勢が全くないところ」といい、一番若いのが「発禁になるほどのメッセージ性」と言った。どれもその通りだ。
▼結局のところ清志郎の魅力は、彼が誰にも似てないということにつきると思う。歌も、ファッションも、ユーモアも、生きざまも、メッセージも。そのどれもが誰にも似ていない。誰にも真似できない。それが日本で初めてロックを体現していた存在ということになるのだろう。
▼「スローバラード」の溢れるリリシズム、「トランジスターラジオ」の底抜けの開放感…彼のささやかな、小さな世界へ注ぐまなざしが、その後のメッセージソングにまで続いているように思う。そのような世界観とは無縁の僕にも、彼の歌が一瞬初夏の青い空を思い出させてくれる。